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 日に日に北風が吹き、冬の訪れを感じてしまうこの頃、みなさんはいかがお過ごしでしょうか?先日、パラグライダーのライズアップを解析すると題した特別合宿を行いました。気象条件により、なかなか難しい状況でしたが、ビデオ撮影および解析、パラグライダーのライズアップを理論的に学習する、自分の出来ていないことや苦手な状況を知る、そして効果的な実際の練習方法の提示までを行いました。突き詰めると、パラグライダーのライズアップも奥が深いもの。たかがライズアップと侮ることなかれ、実際のパラグライダーの操作につながることも多く、参加した人は成果を得られたようでした。さて、第4回目のパラグライダーQ&Aは「パラグライダーのライズアップにおいてどのように傾きを修正するか」その実践編をお届けします。

パラグライダーが傾いたときの修正動作がもたらすメリット


 前回は、パラグライダーの傾きの修正動作に触れる前に、パラグライダーのライズアップの中止を判断し、実行することの大切さを中心にお話ししました。そうはいっても修正動作で頭上に安定させることができれば、完全な目視と飛行判断を行うことが出来るようになります。テイクオフを決断するときに大きな余裕が生まれます。時間的な余裕(判断までの時間が長くなる)、空間的な余裕(判断をするために必要なスペース)が生まれることで、精神的に大きなアドバンテージを得ることが出来るようになります。そのアドバンテージをもってパラグライダーの離陸に望めることは大きな安全マージンを確保することにもつながるのです。

パラグライダーの傾きについて知りましょう。


 実際の修正動作をひもとく前に、パラグライダーが傾くとどのような現象が起こり、人はどのようにそれを感覚的に捉えることが出来るのかを整理しておきましょう。パラグライダーは空気が流入して、そのプロファイルが形成され始めると、その上面と下面とに空気が流れます。ここらが翼のスタートです。ライズアップの感覚でいうと、もっとも重たいライザーのテンションがかかった直後です。ここからライザーは軽くなりはじめ、パラグライダーが自走し始めて、頭上へと登ってきます。この段階以前で傾くのは、翼として傾くことと同じではありません。空気の入り方が不均等であることが原因です。空気の流れ方が不均等であるためであったり、パラグライダーの風見効果が原因でない、ということです。この現象を防ぐにはセットアップが重要であることは以前にお話ししました。ただしこのような原因を同一にして、その後パラグライダーが不均等なまま頭上へ向かってくることはあります。あるいは、ライズアップの開始からの風向きの変化、はじめからパラグライダーのセット方向に対して風が垂直で無ければ、同様にパラグライダーは傾きます。すこし、回りくどい説明になってしまいました。ここでの要点は一つです。パラグライダーが翼として機能しているかどうかです。別の言い方をすると揚力を発生している段階かどうかで、修正動作が異なるということを理解して下さい。
 みなさんが習っている動作の一つには、次のようなパラグライダーの傾きの修正動作があると思います。それは次のようになると思います。「傾いたパラグライダーの方向へステップして、ブレークコードをカウンター操作すること」聞けば非常に簡単に思えます。それでも実際には苦手な人が多いのはなぜでしょうか?

パラグライダーの修正動作のコツをつかむ?


 それは、この動作にタイミングや操作の量の問題があることをつかめていないということではないでしょうか? 重要な箇所なので整理しておきますね。セットアップに原因があるにせよ風に原因があるにせよ、パラグライダーへの空気の流入が不均等で傾いている段階では修正動作としてが出来ることはあまりありません。せいぜいそれ以上に傾かないように走るラインを変更するぐらいです。しかしその後はたくさんあります。つまり翼に空気の流れが生じ、揚力を発生させた段階のことです。よくみかける誤った操作を例にあげますね。それは、傾いたパラグライダーに対して大きなカウンター操作を行ってしまう操作パターンです。パラグライダーが右に向かうので左ブレーク操作を大きく行い、そのままグライダーが後方に落ちてしまう事例をよく見かけると思います。操作としては誤っていないのに、なぜこのような現象がおこるのでしょうか。これはブレークコードによってパラグライダーの迎角が増大して失速していると考えられます。ライズアップで頭上安定を得られる以前のパラグライダーは飛行時に比較して大きな迎角になっています。つまり飛行しているときに比べて遙かに早いタイミングで失速(空気が剥離する)して後方へ落ちていきます。頭上安定とは修正動作の後に確保するべきタイミングですから、実際の修正動作ではブレークコードによる修正に非常に制約があるのです。タイミングも同様に制約があります。
「傾いたパラグライダーの方向へステップして、ブレークコードをカウンター操作すること」この方法は正しいのですが、この方法どおり実践してもパラグライダーに正しく作用しないこともあるのです。むしろ制約のなかでこの動作ができるかどうかが、コツになるのです。

パラグライダーの修正の具体的事例を考える。


 ブレークコードをカウンター操作する。この操作によってパラグライダーを修正できるのは、パラグライダーの迎角がある程度小さくなる段階からです。しかもその操作には失速に対する制約から出来る範囲が決まってきています。当然グライダーのクラスがあがると失速に対する特性からブレークのカウンター操作だけでは対応が難しくなるのです。振り返って操作の前半部分を分析してみましょう。パラグライダーの傾きの方向へのステップ。この操作は次の空力的な特性で非常に有効です。一つ目はパラグライダーが本質的には高い振り子安定を有して自立安定性にすぐれた翼であること。二つ目は速度をコントロールすることで迎角に依存するブレークコードのカウンター操作の欠点を補えること。一つ目から行きましょう。空中を飛行するパラグライダーを想像して下さい。ターンする操作から特別なことをしなくても(つまりはターンに必要なブレーク操作をやめる)簡単に直線飛行へ移行します。ところが地上ではこの振り子による自立安定が作用しません。人は自分の運動慣性を強く感じてしまうからだと思います。慣性とはそのままであろうとすることです。止まっているものは止まっている。走り出すと止まるのはそのための動きが必要です。方向を変えるのもそのための動きが必要です。いちど走り出すとそのままに走り続けてしまうのはそれが運動慣性であるからです。しかし、パラグライダーの傾きの修正時にはそれほど困難な動作ではありません。それはその運動慣性にパラグライダーによる強制力が作用するからです。それはパラグライダーの揚力です。揚力はパラグライダーの翼に対して垂直方向に作用するためその方向に人を引っ張ります。この力に逆らわずに走ればパラグライダーの自立安定を取り戻すことが出来ます。この動きは傾きの修正に非常に有効です。ここにコツがあります。ブレークによるカウンター操作よりステップ方向をコントロールすることが傾きの修正に有効に左右することを知るか知らないか?というコツがここにあります。二つ目は走る速度のコントロールです。あまり書かれていないことですが、パラグライダーが傾いている。このことは揚力の方向が傾いていることになります。この傾きが遠心力と向心力の均衡を作り出してパラグライダーは旋回します。つまり傾きは旋回を作り出します。そう考えると直線飛行と旋回時のパラグライダーの飛行速度に違いがあることに皆さんも気づかれるでしょう。旋回時のパラグライダーは速度が速いのです。これは必要な揚力が一緒なのに、翼面積が減少することで起こります。だからパラグライダーの傾きの修正動作には速度を上げる動きが必要になるのです。これはむしろ傾きを修正するというよりは一連の修正動作においてパラグライダーを失速をさせないために必要な動作です。ブレークによるカウンター操作は迎角を大きくします。ところが、この操作は通常の旋回を直線飛行に戻すときにはよく行われています。この操作が問題なくパラグライダーに作用するのは必要な速度と迎角が保たれているからです。ライズアップの段階ではこのうち迎角に大きな制約があることはお話ししました。したがって、大きなカウンター操作をする必要があるときは、人間によってパラグライダーの速度を上げる必要があるのです。ここにも修正動作をミスしないコツが隠れています。

パラグライダーの修正動作に関するまとめ


「傾いたパラグライダーの方向へステップして、ブレークコードをカウンター操作すること」も当たり前のように習ってきたことですので、すでに飛行しているのに知らない、という人はいないと思います。ですが、知っているのに出来ない、知っているのに苦手、という人が多いのも事実です。先の言葉を呪文のように記憶しても、パラグライダーのライズアップは上達しません。まずは現象をただしく理解することが必要です。次に必要な練習を行うことで正しい感覚を身につけることが重要です。次回は効果的な練習方法のいくつかを実践例としてご紹介したいと思います。今回もご一読ありがとうございました。