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 連載も5回目になりました!この記事はあくまでもパラグライダー上達を目指している皆さんのヒントやきっかけになれるような記述を心がけています。この記事を読んでいればすべて大丈夫!パラグライダーに必要な知識はすべて身につけられた!そういうわけではありませんので、誤解しないで下さいね。パラグライダーの上達といっても、抽象的です。目指すところが違えばゴールも違います。またそのゴールに至るまでの過程を考えれば、決して一つではあり得ないと思うのです。
 そこで、テーマを取り上げたら細分化して取り上げるようにしています。そのため依然としてパラグライダーのライズアップについての記述が続いています。しばらくおつきあい下さいね。

パラグライダーの完全なライズアップの感覚を身につけよう


 今回は、パラグライダーのライズアップおよびそのときにどうしても起こりうる停止の判断と動作、そして傾きを修正して頭上に安定させる、そのための具体的な練習方法に入っていきます。一つ目の練習課題は至って簡単です。普通にライズアップの練習をしましょう。ただし条件がいくつかあります。条件の一つ目は緩い斜面で練習することです。なぜなのか?その前に条件だけ続けましょう。条件の二つ目はある程度風速があること。練習には目的があります。この練習の目的は完全に滑空する準備が整ったパラグライダーが人間に伝える感覚を学習して記憶することです。そのためには余分な運動動作を省き、感覚に集中する必要があります。ですから、風が弱いとその分走る動作が大きくなってしまい、感覚に集中できません。ある程度の風速でチャレンジして下さい。その感覚はパラグライダーが発生する揚力を出来るだけ忠実に再現する。また感覚を学習するために長くその状態を維持したい。過度に斜度があると、パラグライダーは簡単に浮いてしまいます。また斜度が緩すぎるとパラグライダーの翼に沿って流れる空気の流れはパラグライダー本来の相対気流を再現できません。ちょっと表現が難しくなっていまいました。つまり、パラグライダーの滑空費ぐらいの斜度で練習するとちょうどいいのです。この状態だとパラグライダーが通常滑空するのと同じような空気の流れを再現しやすいのです。そして浮きそうで浮かないこの状態こそが頭上安定と呼ばれるポジションだからです。この状態のパラグライダーは限りなく滑空に近い状態ですので、ブレークコードによるコントロールはかなり実際の感覚に近づきます。つまり、すべてのストロークを使用しても簡単には失速しません。簡単に失速してしまうならば、それは頭上安定に入っていないことが考えられます。この練習を行うことで頭上安定の正しい感覚、そしてこれ以前に停止させなければならない感覚、などが身につけられます。練習を行うときの注意点はあくまでもパラグライダーの感覚に意識を傾けることで、どちらかというと受け身の動作です。決して走りすぎてはいけません。

パラグライダーの傾きを積極的にコントロールする練習


 この練習はこれが出来たから、この次に進もう!そういう感じではありません。念のため。パラグライダーのライスアップが上手な人はパラグライダーから伝わる様々な情報を受け取ると、その情報を瞬時に必要な動作や操作に変換して実行します。そのためにも練習は画一的は方法で、均一の感覚だけを目指してやってはいけないと思うのです。パラグライダーの練習の最大のポイントは様々な体験をすることでその操作や動作の基になる経験を増やすことです。それがすぐに上達の結果につながらなくても、体感した経験が重要なのだと思います。そこで次に取り組んでみたいのは、傾きを自ら作り出してはそれを修正しながら元に戻す。そんな練習です。この練習にも目的があります。それは傾いたパラグライダーの感覚をつかむこと。そして同時にそのパラグライダーの傾きが戻ってくる感覚をつかむことです。前回の記事でも書いたことですが、傾きの修正をどのような動作で行うか知っている人は多いハズです。ところが実際のライズアップからテイクオフではパラグライダーの傾きに戸惑い、修正動作が遅れ、あわや!というテイクオフになってしまう人が結構いますね。これは、パラグライダーの傾きになれていないのではないでしょうか?そこで、パラグライダーの傾きになれるための練習をしてみましょう。これも条件があります。やはり斜面でパラグライダーの相対気流を再現すること。そしてこの練習は、なるべく風が弱い時を選んで行います。風が強いと簡単に浮かされてしまいます。それはパラグライダーの対気速度、揚力の発生、傾き、翼面積の変化、というキーワードで説明できるのですが、今回は省きます。浮いてしまうと効率のよい練習にならないですし、この練習は動くことが目的ですのでなるべく動けるような条件の時に練習した方が良いのです。練習に際してはパラグライダーが翼として動くことをイメージして、スラロームランニングに取り組むのがよいでしょう。目標となるパイロンを設置して、意識的にパラグライダーを旋回させるつもりで行うと効果があがります。どのような効果かというと、傾いたパラグライダーが傾こうとして傾く力よりも自立安定しようとして戻ってくる力が大きいということに気づけると思います。そして前回指摘した傾いたパラグライダーが旋回すると、速度が上がっていくことを体感できるハズです。この練習を繰り返すと、ライズアップの時に傾きを感知するのが早くなり結果的に傾きにくいライズアップの実践につながります。またカウンターブレークの操作のタイミング、傾き方向へのステップ、複雑な動作の組み合わせを習得するのに非常に効果があります。ぜひ挑戦してみましょう!

パラグライダーの動きと人間の動きを適応させる


 この練習方法はパラグライダーをライズアップさせたのち、加速と減速を繰り返せるかどうか試す、という方法です。動作としてはパラグライダーをライズアップする、次に少しずつ加速する、次は減速する、もう一度加速する。この動作をできるだけ繰り返します。動作のポイントは一度減速させて、再び加速することにあります。パラグライダーのライズアップが苦手な人の大半はパラグライダーがどこにあるのか分からないまま、かえってその動きを妨げてしまうような操作を行ってしまいがちです。傾きの修正動作の最中にパラグライダーを後方へ落としてしまう人などはこの傾向があります。パラグライダーの速度、ポジションを正しく捉えられないと正しい動作が行えません。この練習を行うと減速した後に人間が走り出そうとすると大きな抵抗がかかることに気づきます。無理矢理走ろうとすると、かえってパラグライダーが後方へ移動してしまい、その動作が原因でパラグライダーが失速してしまいます。この一連の動作はパラグライダーの進行方向と速度、人間の進行方向と速度の関係が迎角を変化させる要因であることを知る重要な練習につながります。ここでは空力に関する詳細な解説はまたも省きますが、パラグライダーのつぶれから失速を誘因させたり、ランディングアプローチ(特に東から北東の強い風で乱れがあるとき)の最中に不意にパラグライダーが失速したように地面へ下がっていく、こういった現象を回避することにもつながっていきます。是非チャレンジしましょう。

パラグライダーのグラウンドハンドリング


 今度は安定したある程度強い風のなかで、様々な動きを組み合わせて自由にパラグライダーを動かせるように練習していきましょう。あまり強い風だと飛ばされてしまうので注意が必要です!パラグライダーのグラウンドハンドリングがライズアップのトレーニングに効果的なのはいうまでもありません。そこでもっともっと掘り下げて挑戦してみましょう。たとえば、頭上安定を確保できたら、そのままブレークコードと人間の動作で斜面を登ってみる。こんな動きもリバースの向き、そしてフロントの向き双方で挑戦してみる。適切にブレークコードでパラグライダーを減速させて風速より遅くします。今度は失速にならないように微調整を繰り返します。このときパラグライダーは後方へ進みます。あくまで人間から見て後方です。人がこの速度に合わせて動くと、一定の速度でパラグライダーは斜面を登ります。さらに、パラグライダーに大きな傾きを作り出し、それなるべく早く回復させながら反対側へと傾けていく。まるで空中でローリングを行うようにパラグライダーを連続して動かしてみましょう。自分から走るよりも走らされているような感覚です。この動きをできるだけ続けられるようになったら、操作の限界までパラグライダーを傾けては直す。そんな挑戦も面白いものです。慣れてくると、パラグライダーの傾きに耐えて、耐えて少しずつ傾けていき、翼端を地面に付けられるように傾け、そこから一気にパラグライダーの傾きを修正していくようなことも出来るようになります。ただし、ある程度の風速でグラウンドハンドリングを行うにはDライザー、最近のパラグライダーだとCライザーでの操作を習得しておく必要があります。これは不意に強い風が吹いたときに飛ばされてしまわないようにするためで、前もって練習して身につけておく必要がありますので、こちらも挑戦してみましょう。そうそう、よくフライトが出来ないような風速で他にやることも無いから練習するんだ!そんな人もいますが、飛べない風で練習することにそれほど効果があるようには思えません。強すぎる風の時は練習はやめましょう。

パラグライダーのライズアップトレーニングのまとめ


 ここに紹介したのはわざと動きに制限を設けること、そしてその制限のなかで捉える感覚を絞って身につけること。そのような目的で紹介してみました。そのときそのときに捉えるべきパラグライダーの感覚という言葉では伝えにくい概念を伝えるためのトレーニング方法です。ただ闇雲にパラグライダーをライズアップして走って浮いてしまう。そのような動作ではなく、テーマを細分化して絞り、そこから出来ないことを明確にして練習する。ですから人によってはもっと違う練習が効果的なこともあろうかと思います。また僕自身も違う練習方法を思いついたら自分で試して紹介しようと思います。次回はパラグライダーが頭上安定から離陸するまでを取り上げようと思います。みなさんも知っていらっしゃると思いますが、離陸直後こそもっともパラグライダーが不安定な状態?この記事の連載もいよいよ一つ目の山場を迎えようとしています。それではまた次回に。今回もご一読ありがとうございました。