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アドヴァンスは歴史のあるパラグライダーメーカーです。
ハイエンドのΩシリーズや、Σシリーズはグランボレでも代々、ベテランパイロットに愛されてきました。そんな老舗のグライダーメーカーがおそらくは本気で取り組んだハイクアップ専用のグライダー装備一試乗がが本当に楽しみです。

届いた装備のまず大きさに驚きます。
たとえるならば、35リットルの登山用ザックを一杯につめこん通常のグライダーザックとはまったく比較にならないコンパクトさ。これだけでもテンションがあがります。

写真 (2)
※右側が ADVANCE PAI を背負ったところ。テンションのあがるコンパクトさ!

アドバンスはスイスに本社があり、そこは、美し山と湖にかこまれた自然豊かな場所です。そんな環境でおそらくは実際に山を登り、飛んではまた山を登って作られたのではないでしょうか?

今回は試乗機はPAI 19 です。PAIは2サイズがラインナップされています。僕の装備重量ではメーカーではメーカー推奨の山岳レンジの範囲に入りますので、翼面荷重は通常の翼と異なり、かなり高めの設定になります。おそらく、大きい方のサイズ23をチョイスした場合は僕の装備重量は通常レンジに入り一般的な軽量グライダーのカテゴリーに入るのだろうと想像しています。

さてさて、それでは装備一式をもって山へ。
驚くべき軽さ。その重さわずか3キログラムちょっと。この装備にはパラグライダーのPAI、軽量山岳ハーネスエベレスト、パラシュートが付属しています。僕が普段通勤で使用しているバックパックにはだいたい愛用のマックブックが入って、さらに普段必要なものを持っていると約3キロ。ですから、普段しょっているバックパックとほぼ同じ重さ。衝撃的に軽い装備です。

ハーネスとパラシュートは山岳用にデザインされている、つまり徹底的に軽量化されているので、取り回しに難があります。つまり面倒なシステムです。ブライダルコード、パラシュートの固定ベルトなど、システムを理解できない人はほぼ装着できない作りです。このハーネスがリバーシブルになっており、パラグライダーザックと兼用になります。
写真
ザック(リバーシブルハーネス)のファスナーをあけると、グライダーがみえる。

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ザック(リバーシブルハーネス)を完全に開いて、グライダーを取り出したところ。

早速装着をすませて朝一番のサーマルをいただきましょう。フライトコンディションは北風が入り始める前の状態です。つまり、結構な荒れ模様。サーマルも朝から出ています。ライザーもほぼラインですね。太いライン。ウェビングベルトで作られていないライザーは徹底的に軽量化にこだわったためでしょう。このあたりも、このグライダーのターゲットが伺える作りです。

ライズアップは簡単です。エアインテークには、リッジフォイルが採用されています。それが、素早い空気の流入、小さな翼面積これが相まって、素早いライズアップが可能です。ただし、翼面積が小さいということは必要な揚力を生み出すために速度を必要とします。つまり体感だけでは、グライダーのライズアップがわかりにくく、確実な目視を必要とします。確実な目視のあとは、きちんと走らないと揚力の感覚がつかめません。早く走るというよりは確実に加速していく感覚です。飛行速度は速く、とても快適です。

前述の通り、ハードなコンディションですが、間違いなくサーマルソアリングできるグライダーです。高い翼面荷重のためにハンドリングの特性は少しピーキーです。あっという間にロールインして、旋回していきます。この操作には少しなれが必要だと思います。なのでセンタリングはやや気を使います。ややもするとグライダーが回りすぎてしまいます。

ランディングアプローチは、もともとの速度が速いので、すこし気を使う方がよいでしょう。それでもコントロールはしやすいので、それほど問題にはなりません。ブレークを押さえて飛ぶと速度が相殺されてしまうので、なるべく速度を維持してフレアーを行った方がいいです。

驚くべき軽量グライダーのPAIはハイクアップのために徹底的なこだわりをもって作られたグライダーだと感じました。とくにパッケージになっているハーネス、パラシュートの装備はむしろ山岳からのフライトを楽しむべき装備に思えます。その意味では、いわゆる軽量化に成功したグライダーというカテゴリではなく、こういうジャンルの新しいグライダーと言えるまったく新しいパラグライダーだといえるでしょう。