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注目のOZONE LM5、岩村インプレションです。

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(OZONE LM5とは)

 OZONE社のLM5は2013年のX-ALPS競技会に合わせて開発された、M4の後継機となるEN-Dクラスの軽量グライダーです。LM5 はLIGHT MANTRA5の意味で、MANTRAシリーズは2005年のMANTRA1から始まり、MANTRA2、MANTRA3とおおむねDHV2-3またはEN-Dクラスのグライダーとして進化してきました。2011年のMANTRA4からは軽量バージョンのLM4も併せて発表され、OZONEはアルピナやスイフトなど中級クラスにも軽量グライダーを発表し、開発力の高さを見せつけていました。

 OZONE社は2009年にコンペグライダーのBBHPPを発表し、リーディングエッジをバテンで翼型を成形し、ライン本数を減らした2列、3列の高性能グライダーで世界のパラグライダーシーンをリードするようになりました。この技術はオートマチックノーズと呼ばれる、Aラインの取り付け位置を後退させることによって、独特のピッチ安定効果をもたらすようになりました。

 OZONEはこの技術を進化させて、コンペグライダーではR10、R11、R12と高性能な2列ライングライダーを開発し、その下のシリアルコンペクラスではENZOでやはり2列ラインでEN-Dクラスのアスペクト7.55でコンペシーンを席巻しています。LM5はその下のクラスでアスペクト6.9ですが、2013年夏のX-ALPS大会に合わせて発表され、クリスチャン・マウラーなどLM5を駆る選手たちが上位を独占したことによって、LM5の性能の高さ、クロスカントリーでの優位性が証明されました。2013年冬には、その後継機となるMANTRA6がすでに発表されました。OZONE社の開発ペースの速さには驚くばかりです。

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    SKYWALK CHILI3のナイロンバテン
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    OZONE ALPINA2のドルフィンノーズ



(オートマチックノーズとは)

 OZONEのBBHPP以来、パラグライダー業界ではリーディングエッジにカーボンやナイロンのバテンを入れて前縁を丸く成形する方法が確立されました。これによって、マイラーフィルムなどによって成形していた前縁の半円形を、ナイロンバテンによってより精密に成形できるようになり、失速特性や立ち上がりの良さを実現できるようになりました。

 それとともに、Aラインの取り付け位置を後退させることによって、オートマチックノーズと呼ばれる、ピッチ安定の高い翼型を手に入れました。オートマチックノーズとは、デザイナーのミハエル・ネスラーなどによって提唱されているもので、迎え角の自動安定効果があります。迎え角が上がった時はAラインの取り付け位置に対して、ノーズが前下がりになる形で迎え角を下げる効果が働きます。逆に迎え角が下がったときは、Aラインの取り付け位置に対して、前縁が上がる形で迎え角を上げる効果が得られます。これによって、オートマチックノーズのグライダーはライン本数を少なくしても、より高いピッチ安定を保てると考えられます。

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    OZONE LM5:実測アスペクト6.9 
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    LM5のライザー部分



(LM5の試乗レポート)

LM5を実際に広げてみると、重量3.5圓箸いΔ修侶擇気砲泙唆辰されます。アスペクト比は、実測6.9で投影5.1というハイアスペクトながら、この軽さとリーディングエッジのシャークノーズと言われる段差のあるエアインテークが特徴的です。ライザーの作りもあくまで軽量化を目指しているらしく、軽量バージョンは細いダイニーマ素材のテープにラピッドリンクもほとんど使わず、代わりにコネクトというダイニーマのテープが使われています。サスペンションラインもほぼすべて、ケブラーのコンペティションラインで、軽く空気抵抗を減らすことに専念しているといえます。

ライザーシステムは3列ラインで翼端と翼中央で別々に迎え角を変化させるアクセルシステムが装備されています。ラピッドリンクに慣れた私には、ケブラーとダイニーマ素材が摩擦しあうことで、消耗する可能性はないのかと少し不安を覚えますが、そのあたりは考慮してラインに被覆をつけたりしているようです。

シャークノーズと言われる段差のあるリーディングエッジは、やはりOZONE社によって開発されたもので、迎え角が大きいときも小さい時もより翼のピッチ安定を保ち、ラム圧を保つ役割をはたすと説明されています。この技術は2011年のR11のころから使われ始めた技術で、GIN社のドルフィンノーズと似通った技術ですが、LM5のシャークノーズは特にエアインテークの面積を小さくし、空気抵抗の低減に役立っていると考えられます。

LM5の立ち上げは、重量3.5圓侶變眠修鯣娠任靴討箸討盞擇のち上がりです。軽すぎて手ごたえがないと感じるほどですが、頭上安定は非常にイージーで、翼が前に行く感じでも、後ろに行く感じでもなく、EN-Dクラスとは思えないほどの安定感です。EN-CクラスのDELTA2はやや頭上でピッチが落ち着かない感じですが、このLM5やアルピナ2は頭上安定がとてもイージーにできています。このあたりは、軽量素材のもたらす効果かもしれません。

頭上安定から加速に入っていくと段階でもLM5は非常にスムーズで、軽量素材のためかピッチ安定が高く、ここでもイージーなテイクオフ特性といえます。風が弱い時や、サーマルに影響されているときは、グライダーが前に引っ張るような動きをする時がありましたが、このあたりはX-ALPSらしいというか、サーマルに向かって前進していくような特性を感じます。しかし、全体としてはクリスチャン・マウラーも言及している通り、狭い場所でもテイクオフ、ランディングできるように、Dクラスとしては非常にイージーな特性と言えます。

ランディングアプローチは滑空性能が高く、スピードに乗りやすいグライダーほど伸びやすくなり、難しくなります。LM5は滑空性能が高い割には、スピードコントロールが容易で、低速もきかせやすいので、この点でも非常にイージーです。比較で言えば、デルタ2やアルピナ2のCクラスに近いくらいのイージーさと言えます。2列ラインのR10やブーメラン9などは揺れた後の安定に時間がかかり、ファイナルアプローチにかなり直線飛行を長くとる必要がでてきますが、LM5は揺らした後の安定も速いので、細かい調整がしやすくなっています。

LM5でのフライトフィーリングは非常に安心感があり、翼の重量が軽いためかあまり手ごたえは感じないのですが、サーマルでの浮きもよく、前進スピードは少し速く感じます。旋回のフィーリングもブレークの操作に直線的に反応するのでとてもイージーですが、そこはDクラスだけあって深く操作すればスムーズに深いバンクに移行していきます。ENの認証テストでもLM5はほとんどすべての項目がAやBの評価となっていますが、スパイラルの項目は自発的な回復傾向がないということでDの評価になっています。逆に言えば浅いバンクから深いバンクまで自由に入れやすく、パイロットが長い時間クロスカントリーフライトをするのに適した特性ともいえます。

軽量ライザーのアクセルシステムは細いダイニーマ素材のライザーが直接プーリーを通過するようになっていて、軽い力でアクセルが踏めるようになっています。アクセルは非常に効果的で、沈下も少なくスピードアップすることができます。アクセルを踏んでも、ピッチが不安定になったり前縁がつぶれそうになることもなく、このあたりはクロスカントリーで激しい気流を飛ぶ際にも有利な安定性と言えます。
LM5で片翼つぶしを試してみましたが、反応は非常に穏やかでした。Cクラスのデルタ2も似たような反応を示しますが、翼端の1割ほどがリオープンのショックを吸収するためか、ゆっくりとリオープンします。3割程度つぶしても、翼が不安定になることもなくこの点でもアルプスの激しい気流を飛ぶうえで有利な特徴をもっています。
 
(LM5の試乗のまとめ)

LM5は王者クリスチャン・マウラーがアドバンスからOZONEに移籍して、X−ALPSに出場するために開発して連続優勝を果たしたグライダーだけに、OZONEのこれまでのノウハウにマウラーの才能が結合したグライダーと言えるでしょう。OZONEのこれまでのグライダー、例えばM4に比べると非常に扱いやすく安心感のある高性能機という感じがします。

クリスチャン・マウラーはワールドカップのパイロンレースでも、表彰台を独占し、X-ALPSも3連覇。それに加えて、グライダーやハーネスの開発にも高い才能を示しています。クリスチャン・マウラーの考え方は大胆な飛び方をするときにも合理的な考えに裏打ちされています。

LM5はアルプスの激しい気流の中で、長時間クロスカントリーフライトをするために、高性能ながらも安心してフライトでき、狭い場所でも離着陸ができるという扱いやすさを兼ね備えています。そのうえで3.5圓箸いΨ變未篭辰べきスリムダウンをしています。前回2011年ののX-ALPSでOZONEはR11の2列ラインを使っていたことを考えると、マウラーとOZONEの開発チームでよいチームワークができ、よいグライダー開発ができていることの証明とも考えられます。

フライトした感じでいうと、LM5は軽量の中では最高の性能を持っていると同時に、非常に扱いやすいという意味では、Cクラスに匹敵する乗りやすさです。実際、LM5はENテストのほとんどすべての項目をAまたはBで通過しているところを見ると、OZONEはこのアスペクトでもCクラスやBクラスを作ることが可能なのだろうと思えます。現在LM5 の後継としてM6が発表されていますが、M6がLM5をどのように進化させたものなのか楽しみです。