岩村グライダーインプレッション、今回は OZONE MANTRA 6 (M6)です。

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OZONE社のMANTRA6とは？



OZONE社のMANTRA6は2013年夏のX−ALPS大会で大活躍したLM５の後を受けて2013年の冬にDクラスのグライダーとして発表されました。MANTRAシリーズはその上に位置するDクラス競技機のENZO2、R12とは一線を画し、いわゆる一般ユーザーが使いやすいDクラスグライダーを目指しています。ENZOやR12は2列ラインで純然たる競技用グライダーですが、その分ハイアスペクトで立ち上げや取り回しの難しさがあります。この点を重視したのか、X-ALPSの王者クリスチャン・マウラーは2013年に合わせてLM5を開発し、見事X-ALPS2013でも3度目の優勝を飾りました。LM5はLIGHT MANTRA5の略称で、X-ALPSなどの用途に合わせて軽量化された機体でした。MANTRA6はLM5のすぐあとにさらに技術を向上させたOZONE社が発表したモデルです。

MANTRA6は3列ラインに、際立ったシャークノーズを持っています。シャークノーズもOZONE社が開発した技術で、ナイロンロッドを入れてリーディングエッジをきれいに成形する技術からさらに踏み出し、エアインテーク部にナイロンロッドで段差を設けることによって、エアインテークの開口面積を小さくし、空気抵抗を軽減しています。OZONE社の解説によれば、このシャークノーズによって、迎え角が大きいときも小さいときもグライダーの内圧を高く保つことができるといっています。パラグライダーの内圧を決める気流の圧力が最大となる、よどみ点は迎え角によって位置がエアインテークの位置から上下に変化し、つぶれなどの問題が生じますが、シャークノーズはこれに対する画期的な技術と言えるでしょう。

M6を広げてみると、アスペクト比が実測6.9ほどで、比較的軽量にできておりLM5との大きな差は感じませんが、LM5の方が軽いことと、立ち上げた形を見ているとM6のほうがアーチが深く感じます。これは、アスペクト比を比べても明らかで、実測アスペクト比は同じ6.9ながらLM5は投影5.1に対してM6は投影5.0とM6 のほうがアーチを深くかけていることがわかります。アーチが深くなると、揚力が左右に引き合うので翼の剛性があがり、ブレークを引いたときに翼の揚力が横方向に働くことによって、ロールがかかりやすくなります。つまりよりロールがかかりやすいグライダーになったと想像できます。実際にM6に試乗したパイロットに聞いてみると、今までのOZONEのグライダーに比べて、翼の剛性感が増しており、ターンの時は今までのグライダーよりもヨーイングよりもロールが起こりやすくなったという感想が聞かれました。

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MANTRA6の試乗レポート


今回試乗させて頂いたのは、M6のMSサイズで80〜95�圓療�正重量の上限となる95�圓能佞猟�霧エリアをフライトしました。ハーネスはアドバンスのポッドハーネスであるインプレス3です。M6の立ち上げは、エアインテークが小さいためか、はじめの形状形成と立ち上がりが遅めに感じます。向かい風があるときは、何ら問題ありませんが、風が弱い時や助走距離が短いときは、揚力を感じるまでが少し遅く感じます。もう一つ、翼端部分の空気の入りが遅くなっているようで、翼端部の形状形成が遅れたり、少しクラバット気味で立ち上がることがありました。しかし、全体としてみるとDクラスとしては十分に扱いやすいテイクオフ特性であり、立ち上がった後はシューティングもなく、非常にコントロールしやすく感じました。

サーマルソアリングを始めると、ピッチの安定感や操作の感覚はLM5に似ていてとても安心感があります。浮きもよく、操作の反応性も良いといえます。前評判通り、ロールがかかるわりにはヨーイングが少し遅れるので、山肌で素早く旋回したいというときには、若干遅れを感じるときがありましたが、このクラスとしては十分な旋回性といえます。旋回中はブレーク操作だけでロールがかかるので、体重移動はむしろ少し遅れ気味でもよい感じです。逆にサーマルの最初の上昇を探るときは、先にブレークを引いて旋回に入れ始め、上昇がしっかり確認できたら、初めて体重移動を入れるような形でもうまく行きました。

空中での安定性も良く、普段ブーメラン9に乗っている私としては、非常に安心感がありました。ちょっと気になったのは、アーチが深いせいか、たまにサーマルに反応して素早いロールが起こることがあります。サーマルソアリングに当たった時、風見効果でヨーイングが起きるグライダーもありますが、M6の場合はこれがサーマルのある側にロールが起こるようです。これはOZONEのCクラスであるDELTA２でも見られた傾向ですが、深いアーチにサーマルが当たると横方向への揚力が働き、サーマルの方に引っ張るようなロールが働くと考えられます。これはサーマルソアリングには有利な特性ともいえますが、荒れ気味のコンディションでは時折早い動きが起きて、なれるまではちょっと戸惑うかもしれません。このあたりは、M6がサーマルを捕まえて上昇し、長距離を目指すDクラスとして開発された特性かもしれません。

M6の乗り心地は非常に快適です。直線飛行での安定性も良く、サーマルソアリングでの操作性も高く感じました。それでいて、ピッチは安定しており、つぶれるような場面はほとんどありません。つぶれた場合にも、翼が柔らかく反応してくれるので大きなシューティングに入る傾向もなく、安心して乗っていることができます。翼端折りをした時もそうですが、M6の翼端部分は意図的に内圧がかかりにくく作られています。そのため、つぶれた後の回復は翼端部分だけ少し遅れます。これは、大きくつぶれたときに最近のグライダーは内圧が高くなって、一気に翼が回復しその反動が大きくなることがあるための対策のようです。このために、翼端折りやつぶれからの回復は多少時間がかかりますが、翼端の一部分であるため、操作性にはほとんど問題がありません。

朝霧エリアの尾根上で十分にサーマルソアリングのテストができたので、ためしに前の平野側に6�卍�度グライディングしてみました。2列ラインのコンペグライダーであるブーメラン9と違ってやはり、滑空比ではさほど伸びない感じですが、向かい風が4mほど吹いている状況でも、割と難なく戻ってくることができました。M6にはアクセルシステムとリアライザーにはコントロールハンドルがついています。OZONEではアクセルを踏んだときにはブレークを引いて操作すると揺れやすくなるので、リアライザーでコントロールすることを推奨しています。2列ラインのブーメランでもそうですが、最近のグライダーはリアライザーコントロールを使うことによって、効率よく直線飛行ができると同時に、ピッチコントロールが適切にできるようになります。コンペやクロスカントリーを目指す人は、サーマルで上げて次のポイントに移動するときには、覚えておきたい技術です。

MANTRA6試乗のまとめ


M6はLM5の後継機だけあって、扱いやすく一般ユーザーにも乗りやすいDクラスグライダーとなっています。コンペやクロスカントリーを目指す人、Cクラスのたとえばデルタ2からのステップアップの方にも乗りやすいグライダーといえるでしょう。最近の傾向として、メンター3やカレラのようにBクラスでも高性能で滑空比の高いグライダーが増えています。これもひとえに業界の技術革新と開発努力のおかげと思います。しかしながら、その分ユーザーにはBクラスだから低性能で安全なのかという誤解も生まれているようです。OZONE社はあえてその流れには乗らず、Dクラスというカテゴリーを守った中で、乗りやすいDクラスとしてのM6を発表してきました。

ユーザーにとってみれば、Bクラスはラッシュ4、Cクラスはデルタ2、DクラスはM6という形でわかりやすいラインナップになっているともいえます。業界に次々と革新をもたらしたOZONE社がこういった部分では手堅く、クラスごとのすみわけを守っているのは、少し意外な感もありますが、ヨーロッパアルプスの厳しいサーマルでは例えばM6をCクラスに通すというリスクは冒したくないのかもしれません。また、それだけにM6はDクラスらしい動きの俊敏さをもち、自由に動くことのできる高性能機という感じがしました。M6の対象パイロットとしては、コンペやクロスカントリーを目指す方、Cクラスを乗りこなして、さらに上にステップアップしたい方などがお勧めです。扱いやすいとはいっても、それなりのアスペクト比や扱いの難しさはありますので、ステップアップの際は立ち上げやグライダーコントロールの練習に最初は注意することをお勧めします。