カテゴリ:
4/14(土)救急救命講習を実施しました。

加藤が消防本部の方と協議をしてアレンジをした今回、パラグライダーで発生する実際の事故を模し、ヘルメットやハーネスを装着している前提で、事故発生時の事故者のダメージの観察から負傷部位の固定、搬送までの救命の手順をシナリオトレーニングいたしました。

20180414_193037


実施内容は下記の通りです。

- 事故者のパイロットの観察の手順

我々が事故者への救急救命として最も最初に行うべきことは、救急車が到着または合流するまでの間の初療。そのためには、まず事故者への緊急での心肺蘇生が必要かどうかの判断、また、どの程度のダメージを受けているかの観察・評価が必要になります。下記手順での初見の観察・評価をします。

1.意識
2.気道
3.呼吸
4.循環

大切なのは頭部保持。高エネルギー外傷でダメージを受けている場合、頭部と頚椎の損傷が疑われ、この部位のダメージは事故者の生命に直結するため、手順は頭部保持をした状態でおこないます。

IMG_2723


初見の観察・評価の後、下記の手順で全身観察を行い生命に直結する負傷部位を短時間で探します。

頭 → 顔面 → 首 → 胸部 → 腹部 → 骨盤部 → 大腿骨 → 四肢 → 背部

以上の手順をシミュレーションしました。

- 負傷部位の固定

観察・評価で負傷部位を特定できたら、状況に応じて負傷部位の固定です。頚椎固定、全脊椎固定の方法や圧迫止血等をシミュレーションしました。

IMG_2724


この際に話題にあがったのが、事故者が出血をしている場合の感染症リスクについてでした。感染症をもつ事故者が出血をともなう事故をした場合、なんの装備をもたない救助者が事故者の血液に触れることで感染症にかかるリスクがあり、感染症予防のためのビニール手袋を持っての救助が理想的との指摘です。

小林は、過去グランボレ外で発生した実際の事故で、大量出血を伴う事故者の救助をした経験があります。出血により事故者が目に見えて弱まり、非常に気が動転しての救助となったようです。この経験以来、小林が整備をしているグランボレのレスキューセットにはビニール手袋が含まれています。

消防の方との会話により我々のあるべき準備や装備を再確認することができ、とても良い機会となりました。

- 搬送

パラグライダーでの事故は山の中での事故となることが想定されるため、事故者を救急隊員に引き渡す・救急隊員と合流するには、搬送が必要なケースが多く考えられます。このため、負傷部位を固定したら搬送のシミュレーションです。

ストレッチャーやスクープ等の機材を使ったシミュレーション、機材がないことを想定し、救命救急では一般的な毛布を使った搬送、そしてパラグライダーのザックやレスキューセットに含まれるシュリング、クライミングハーネス等を利用した搬送等、小林が実際に経験した事象や JPA でのトレーニングで得た知見も踏まえ、実際にパラグライダーの事故で起こりうる事態を想定したシミュレーションを行いました。

- 救急隊への連絡

ここからは、救急隊の方に来ていただいて事故時に救急隊へ連絡をする際の注意点などをお話しいただき協議しました。

名前、事故状況、事故状況、負傷者の状況等の連絡時に伝えるべき基本情報の確認からはじまり、昨今のパラグライダーのフライトをする場合 GPS デバイスを持参していることがほとんどのため、GPS で座標を伝えることが一番であること、また、その際に世界測地系での連絡が必要であること等の説明を受けました。

救急隊の方もプロであるため、連絡について「緊急時の連絡フローは一般のパイロットの方からの連絡としているのか、それともスクールからの連絡か?」と適切な確認がはいります。

通常は事故発生時にはスクールから救急隊への連絡をいたしますが、パラグライダーの性質上、パイロットの方から救急隊への連絡をおこなわなければならないケースも想定されます。

パイロットの方からの連絡の場合、三峰で発生した事故の場合携帯電話が通じる場所がほとんどのため、携帯電話の利用が適切であること、また、その際に携帯電話のバッテリー消費をおさえるために、消防と救急に同じ説明を求められたら「説明したので聞いてほしい」といい電話を切るべきであること等々について説明を受けました。

また、ヘリコプター搬送が必要になった場合を想定し、搬送までの流れや搬送できる条件、ヘリコプターから事故現場を特定しやすい方法の確認などを行いました。

- 事故者のヘルメットやハーネスの脱着について

IMG_2739


パラグライダーでの事故を想定した場合、事故者はヘルメットやハーネスを装着していることがほとんどです。このため、今回は事故者の観察や負傷部位の確認等の際の頭部固定をしたままでのヘルメットやハーネスの脱がせ方や、脱がせるべきかどうかの判断の仕方などを、実際にヘルメットとグライダーがついたハーネスを装着したモデルを用意したうえで、シミュレーションしました。

IMG_2730


消防の方々も、ヘルメットはまだしも、ハーネスについては知識がなく、どうあるべきかを我々と協議しながらの確認となり、とても有意義な内容でした。

ご参加いただいたパイロットの皆様、タンデムパイロットの皆様、その他運営スタッフの皆様、遅い時間までありがとうございました。エリア運営上極めて重要内容であり、また、パラグライダーのフライトでのリスクの低減には、多くのパイロットが知っていることがとても重要な内容であるため、皆様のご協力に感謝申し上げます。

また、実施にご協力をいただきました利根沼田広域消防本部の皆様に厚く御礼もうしあげます。皆様への連絡をしお世話になることがないよう、安全なフライトとスクール運営をしてまいります。

最後はグランボレらしく、飲み会で終了!

のはずが、残念ならが翌日のコンディションが優れぬ天気予報。本日帰りで、ドライバーのため飲めない方ばかり(涙)

お疲れ様でした!

毎年実施している救急救命講習ですが、1年ごとに「心肺蘇生」と「パラグライダーに特化したシナリオトレーニング」を交互に実施しています。

来年は「心肺蘇生」。是非ご参加ください。

20180414_200829