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ターゲットランディングの技術、前回その6では着地操作にはオーバープル方式のほか、フレアー方式や振り子方式があることを学びました。今回はフレアー操作の技術やストールポイントについて考えてみましょう。

ストールポイントというのは、パラグライダーの場合ブレークコードを引いて失速するポイントのこと。静穏な風で整備されたパラグライダーなら、フルブレーク程度までブレークを引いたところで失速に入ります。

上の動画は2013年のXALPS大会で優勝したクリスチャン・マウラーがゴール直前のモナコのテイクオフで、プロモーションもかねてテイクオフでのトップランディングを繰り返すシーンです。正面風が安定して吹き上げている状況とはいえ、グライダーが変形するほどのストールポイントまで使いこなす職人技には脱帽ですね。

パラグライダーはストールポイントになると、翼上面の気流の剥離によって空気抵抗が増し、ディープストールやフルストールという状態に入ります。ディープストールは翼の形を保っていますが、フルストールは翼内部の空気が抜けて、翼が後ろからつぶれたり、後方へバック飛行するような場面もあります。

ストールポイントに入ると、失速特性の穏やかなグライダーは粘ってディープストールの状態になったり、上の動画のように変形しながらも、前にシューティングすることによって回復しようとします。失速特性の激しい翼は、一気にグライダーが後方へ移動しフルストールに入るものもあります。

そのようなわけで、ターゲットランディングを突き詰める人は、このストールポイントというリスクのあるものを学ぶ必要がでてきます。穏やかな失速特性であったとしても、ストールポイントではどのような挙動を示すのか、失速し始めた時にどうすれば安全に着地できるのかという判断が必要になります。

上の動画はストールポイントについて、また失速からの回復やその危険性についてわかりやすく解説されています。失速の回復には急激なシューティングを伴い、翼がつぶれたりクラバットによって回復不能になる場合があります。また、それほどでなくても失速に入ったり、回復時のシューティングによって10m程度大きく沈下します。

そのようなわけで、特に初心者の方にはあえてストールポイントを探るような練習はお勧めできません。まずは失速させないように、空中ではフルブレークまで引きすぎないようにすることが重要です。

しかし、上級者になりターゲットランディングやトップランディングを目指すようになると、ある程度はストールポイントの理解が必要です。それは、失速寸前の兆候を理解することで、失速のリスクを回避できるからです。

パラグライダーは失速寸前になると、対気速度が弱まり、沈下速度が大きくなったり、グライダーが後ろに引っ張るような感じになります。またグライダーによっては、左右に不規則な揺れを生じたりします。これらの兆候をとらえて、失速寸前だと感じたら、ブレークを戻すと失速を回避できます。この失速寸前のポイントを利用して、ブレークコードのポンピングを使う操作が、前述のクリスチャン・マウラーなどが使っているテクニックです。

上の動画でもターゲットに合わせるためにかなりストールポイントに近いところまで、ポンピングしていることがわかります。ただし、もちろん失速やシューティングのリスクを伴いますので、ストールポイントの練習を目指す人はまずはインストラクターに相談し、方法論をよく理解してから練習してください。一つだけアドバイスするとグランドハンドリグやショートフライトでこの練習をすると比較的リスクなくストールポイントが習得できます。

さて、次回はトップランディングなど傾斜地に降りるための技術について考えてみましょう。