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グランボレのサーマルソアリング その8

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 グランボレのサーマルを予測する場合の、気温減率や雲底高度などについて考えてみましょう。サーマルが上昇していくためには、サーマルの温度が周囲の空気の温度よりも気温が高い必要があります。日射によって、地表が温められると地面の上の空気の気温が上昇して、空気の塊が膨張し、密度が小さくなって上昇していきます。そのため、サーマルが発生する条件としては、日射が十分にあること、地表が日射を受けて十分に温まるほど、乾燥して、風が強くないことなどが必要になります。

 温まった空気の塊が上昇していくためには、周囲の空気との温度差が重要です。サーマルは上空の空気が冷えているほど上昇しやすいことになります。日照によって、地表の空気の塊が温まって上昇を始めると、この空気の塊は上昇するにしたがって気圧の変化で膨張し、気温は下がっていくことになります。この気温が下がる割合は乾燥断熱減率といって、100mにつき1℃の割合で気温が下がります。そのため例えば、地表で16℃まで温まって上昇を始めたサーマルは1000m上昇すると、10度気温が下がって6度程度になっていると考えられます。そのため、上空の気温がどの程度か、地表の気温がどの程度まで上がるかということが、サーマルを予想する上では重要になります。 

 このサーマルが上がる温度のメカニズムを理解するには、エマグラムというものが重要です。このエマグラムによって、気温と高度の状態が分かり、さらに地上の気温の推移を予想することによって、サーマルがどこまで上がるのか、場合によってはサーマルが上昇しすぎて積乱雲が発達したりということが予想できるようになります。エマグラムは下図のように高層気象観測を行う、茨城県の館野などでデータがでています。このエマグラムは高度10000m程度までを対象としており、パラグライダーが飛ぶ高度を詳しくみることは難しいのですが、最近ではtenki.jpのように高度ごとの温度を予想したり、sunnyspot のように、雲底高度を予想してくれるサイトもあり、便利です。繰り返しになりますが、エマグラムとサーマルの原理を知ることが重要です。そして、現場や気象情報の温度データからある程度サーマルの高さや時間、場所などを予想することができます。
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先日、11月24日にグランボレでソアリングセミナーを行いました。この日は高気圧の後面で南東の風で雲底予想高度は1200mほどでした。気温減率はtenki.jpの赤城山の予報で見ると、600mが5.8℃、900mが4.5℃、1100mが3.7℃、1500mが1.9℃、2000mが-1.2℃といった予報でした。沼田の地上気温の推移は、9時で8.6℃、10時で11℃、11時で12度、12時で13.7℃といった感じでした。グラフが少し見づらいですが、以上の温度データをグラフにすると下図のようになります。
左にプロットした水色の立ち上がった線が600mから2000mまでの気温減率になります。それに対し、9時、10時、11時、12時の地上気温によって、地上を離れるサーマルは100mにつき1℃の乾燥断熱減率によって、上昇とともに気温が下がり、9時では900m程度で上昇が止まりますが、10時では雲底高度となる1200mまで十分に到達することが分かります。積雲ができ始めると、湿潤断熱減率となり、気温の低下率はまた変わってきますが、サーマルが上がり始める時間、サーマルがどの程度まで上がるかがこのエマグラムによって予測できます。
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ちょっと小難しい話になりましたが、エマグラムや気温減率のだいたいの概念を理解することで、サーマルの上がる時間や高度、自分が飛んで楽しめる時間を予測することができるようになります。気象情報サイトを見るだけでも、ある程度の予想はできますが、クロカンやソアリング空域を広げるためにも気象の勉強が役に立つはずです。

グランボレのサーマルソアリング その7

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 グランボレのソアリングコンディションで、上げやすいサーマルを探す場合、まずはテイクオフ前のサーマルブローを捕まえるのが効率がよいと言えます。特にテイクオフに南東から安定した風が入っている場合は、テイクオフしてからテイクオフ前で8の字にリッジを取るようにします。そうすれば、テイクオフ前の対地高度が取りにくい中でも、斜面に近づきすぎることなく、サーマルを探ることができます。この8の字で高度を取りながら、サーマルをヒットすることができたら、そのままスムーズにリスクなく、サーマルソアリングに入ることができます。テイクオフ前が切り立った急斜面で、安定した向かい風が入るエリアではよくこの手法が使えます。
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 しかし、何事も例外はあるもので、この手法が使えない場合もあります。例えば、テイクオフに安定した向かい風が入らない場合です。これは、本流の風が背後となる北西から吹いているとか、サーマルコンディションが弱いために谷風としての南風が吹いていないと考えられます。こういった場合は、テイクオフ前でリッジをとっても高度を取ることは難しく、特に北西風の場合は乱気流の危険もあるので、早く前に出たほうが賢明と言えます。
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 もっとも重要なことは、テイクオフする前から本流の風と太陽の位置、それによってサーマルの出そうな位置を予測することです。グランボレの場合は特に、風向きが重要で南東の風か、西よりの風であるかが重要な分岐点になります。これは、西の風が優勢になってきた場合、リーサイドの乱気流の危険があるとともに、西風によるコンバージェンスの上昇風が発生しやすくなるためです。北西風が強くなってくる場合は、乱気流や吹きおろしが強くなってくるので、早くランディングするとかフライトを中止する判断が必要になります。
 このようにグランボレのフライトでは、南東風になるか北西風になるかが、判断の重要なポイントになります。そのため、前日くらいから天気予報や天気図をチェックしておくこと、エリアについてからは常に風向風速をチェックし、特に上空を飛ぶグライダーが西風の影響を受けていないかチェックすることが重要になります。特に春先や冬の時期は局地的に北西風が急に強まる場合があるので注意しておきましょう。

パラグライダーQ&A第12回

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 さて唐突ですが、みなさんは飛行することができますか?
もちろん、初めての高高度飛行を終えた講習生からベテランパイロットまで、パラグライダーのフライヤーであれば、YES! みなさん飛べるはずですよね。
 しかし、本当にそうなんでしょうか?最近グランボレでは、ヒューマンエラーについての講習を実施しています。こちらはパイロットコースに在籍している講習生の方を対象として実施しています。理由は明確です。パラグライダーのパイロットとして本当に知らなければならないことは、従来の講習、技術や知識に関する講習だけでは得られないことがわかってきました。ボクは事故を減らしたい。できれば無くしたい。その気持ちを込めてこの講習を行っています。
 このヒューマンエラーですが、ヒューマンエラーブックについて通読したことがない方はぜひ一読をお勧めします。事故がおこることはがんばって防げるような精神的、肉体的な努力や負荷で達成できる物ではないことが良く理解できます。その教科書の最後に次のような文章が書かれています。引用します。
 「本来、空を飛ぶようにはつくられていない人間が、知恵と努力によって大空を舞うことができるようになりました。しかし、それは人が作った道具によって飛べるのであって自らの体が飛べるようになったわけではありません。人間の知力が人の能力を上回る性能を持つ道具を作り出すたびに、そして道具の性能と人のそれとの差が大きくなればなるほどとても便利な道具と評価され、使う人に大きな満足感を与えてきました。一方で、人の持つ能力と、道具の性能差が大きくなればなるほど、それを操作する者に様々なストレスを与えてきたことも事実です。中略
 パラグライダーとヒューマンエラーという問題は、人の体に飛行機能が備わることがない限り、繰り返して論じられるべきものと思います。」


 私たちフライヤーはパラグライダーという道具があるから飛べるのであって、身体の運動能力にせよ、空気や温度の感覚にせよ、視力にせよ、その本来備わった能力では、絶対に空を飛行することはできない動物であることを知らなければなりません。つまり身につけた技能は、飛行する能力ではなく、飛行するための道具を操作、使用する技能に過ぎないのです。そこで、今回取り上げるのはテイクオフを取りやめる技術についてです。最近のベーシックコースの課程ではかならず練習するのですが、具体的にどのような技術なのでしょうか?
 

パラグライダーのテイクオフで必要なこと


 テイクオフという地形は、そこに人間の都合が介在している以上はかならず離陸しやすいように修正されているケースがほとんどです。つまり、パラグライダーの滑空費よりもおおきな斜度になるように作られています。このことは必然として、離陸はしやすいが止まりにくい。いざテイクオフを取りやめようと思ってもなかなか止まりにくい。このことをあらかじめ知識としては知っておかなければなりません。
 そこに、最近のグライダーの高性能化です。パラグライダーの性能の向上は良く飛ぶということ以外に、ユーザーが優しく扱えるように、ミスコントロールを許容するように作られてきています。このことは一見すると良さそうですが、何においても完璧な技術など存在しません。失速しにくい翼は、テイクオフ時に取りやめようと思っても、飛ぼう飛ぼうとしてなかなか思うように止まれないものです。
 そこに人間独特のエラーが付け足される可能性は常にあります。パラグライダーのライントラブルです。ここでは空力的な解説まではしませんが、次の事実をみなさんは知っておく必要があります。
それは、「一日のフライトを通じて、誰もラインが絡んでいない、そんな日はほとんどない」という事実です。もちろん、飛ぶ人が少ない平日などに、何事もなく終わることもありますが、土曜日、日曜日、そんな日はたいていラインが絡まった状態でテイクオフするグライダーが必ずいます。身に覚えがある人はまだ良いのです。このような人は次に備えようとするでしょう。そうでない人は要注意です。
 プレフライトチェック、スタートチェック、このような言葉とテイクオフゾーンで交わされるルーティンは意味のないものではなく、事故を未然に防ぐために考え出された方法です。
 それでも、ラインチェックに不備があったり、あるいはその他の事由で止まらないとならない場合はどのようにすれば良いのでしょうか?

 このデモでは、ラインは完全にクラバット(パラグライダーのラインがキャノピーをくぐっている)していますね。演技者はまずライズアップ時に左右のライザーから伝わるテンションで何らかの異常を察知します。グライダーが大きく傾こうとする挙動をかなり早い段階でつかんでいます。次に頭上に安定させようと試みます。パラグライダーのテイクオフで最も重要なのがこの頭上に安定すると言うことです。しかし、頭上に動いていくグライダーはもはや安定することはなく、目視でもパラグライダーのクラバットが明確に見て取れます。この段階でテイクオフを取りやめます。助走としては減速を開始、そして一方のブレークコードでパラグライダーを斜面に向かわせるように操作します。斜面に向かうようにパラグライダーを操作することで、パラグライダーの滑空費と斜度の関係を断ちます。つまりどうあってもパラグライダーが飛び立つことができない方向へパラグライダーを向けて停止させるのです。

確実に停止できる技術とは


 デモ演技はあまり緊迫感がなくて伝わりにくいのですが、このような状況でも飛び出してくるパラグライダーはあります。これは事実なのです。おそらく、ただのパラグライダーのライズアップ時における傾きぐらいに考えて、無理矢理修正し、頭上安定もさせずに闇雲に走れば、この状態でもパラグライダーは飛びます。しかしその後は、旋回しようとするパラグライダーに四苦八苦しながら、場合によってはツリーランすることが安全のために優先されるでしょう。つづいて次の演技もご覧ください。

 パラグライダーのDラインが絡まった状態でライズアップを始めています。演技者は先ほどよりは少ないが、左右のライザーから伝わるテンションに異常を感じています。ステップの方向によって傾きを修正しようとしますが、この時点でパラグライダーの状態の異常を疑い始めます。そして頭上安定をさせることが不可能であると判断し、すぐに停止動作に入ります。ここでも、頭上安定をさせられないパラグライダーでテイクオフはしないということを貫きます。これらの演技を通じて共通しているのは、
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通常の状態(パラグライダーがということ)であれば問題なく上がってくるはず。
つまりパラグライダーの挙動に疑いを持つ。
い修里燭瓩棒簑个防要以上に加速をしない。
テ上安定で確実にパラグライダーを目視する。
Δ垢阿気洌貶のブレークコードで停止動作を実践する。

完全なテイクオフは安全のため


 つづいて次の演技をご覧ください。

 こちらは、パラグライダーに何の異常もありません。そのことは映像を見て頂ければわかると思います。ではなぜ、停止動作に移行しているのでしょうか。ここまで読み進めて頂いたのであれば、その理由に思い当たるかもしれません。
「頭上安定が不十分である」これがテイクオフをとりやめた理由です。
演技者は異常を感じることなく、ライズアップを完了しようとしています。しかし、頭上安定に移行しようとするとき、予想をしていたポジションにグライダーが安定することなく、すこし下がってしまいました。そのため、頭上安定が不十分、必要なパラグライダーの目視確認もできませんでした。つまり飛行決心をすることなく、停止の判断をしたのです。このまま加速を続ければパラグライダーは大きなピッチングをともなってテイクオフすることが予想されます。テイクオフ直後は、もっとも危険な高さです。それを避けるために、中止を選択したというわけです。テイクオフはあらゆる意味で可能性にかけてはいけません。頭上安定で飛行への確信をもつこと。これだけです。
 今回はテイクオフで停止することを取り上げました。このことについて、上手に止まることができました。という評価をあまり聞きません。それは技術的な課題が、上手にテイクオフをすることを中心に講習されてきたためです。しかし技術を身につける真意はやはりその本当の意味を見失ってはならないと思います。上手に出るためのテイクオフの技術が安全であるために必要であるなら、一方で確実に停止できる技術を身につけておかなければそれは技術としては未完成です。
 みなさんも、ちょっとコンディションが渋いときなどに広い講習ゲレンデで練習してみることをおすすめします。当然ですが、人間にこのような技術がはじめから備わっていることはありません。練習でできないことは、本当に必要な時にその技術が発揮されることはありません。ちょっと堅い話になってしまいましたが、今回もご一読ありがとうございました。



 

パラグライダーQ&A第11回

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 久しぶりになってしまいましたが、好評につき?再開したいと思います。ブログを更新していると、人気の記事として「パラグライダーQ&A」が上がってくるときがあります。読んでいただけて本当に嬉しいです。そんなマニアックかつディープなファンのためにも不定期ながらも続けていきたいと思っていますので応援よろしくお願いします。
 今回は11回記念および再開記念ということでお届けします。先日、フィールドジョイの長島さんを講師としてソアリングセミナーが開催されました。参加者の熱心な態度、意欲の高さ、そして受講後の晴れやかな表情がとても印象的でした。わたしも深く感銘を受けた次第です。そのセミナーでは逆転層についてかなり詳細な講習があり、受講生のみなさんもお話を聞き逃すまいとしておられました。
 パラグライダーは空を飛行するスポーツであり、そしてその最大の魅力はソアリング(上昇気流をつかまえて長い時間滑空し続けること)にあると思います。いうまでもなく、そのエネルギーは自然に由来するものです。上昇気流にはさまざまな種類がありますが、ここでは熱エネルギーによって生まれる暖められた空気、すなわちサーマル(熱上昇気流)についてを取り上げようと思います。
 サーマルについて、かつてパラグライダーの世界チャンピオンになったブルース・ゴールドスミス氏はこのように述べています。
 「この強力だが、目に見えない自然の力との遊び方を知っているのは、私たちと美しいソアリングバードだけだ」ー引用サーマル・フライング、序文より
 ソアリング、サーマルについて触れるといってもあまりに抽象的になりすぎますし、先述したサーマルフライングより優れた教科書にすでに述べられているとおりですが、そこはみなさんの「パラグライダーQ&A」です。逆転層(接地逆転、放射性逆転層)についてアカデミックかつサイエンス・スピリット満載?でお届けしましょう。

逆転層をみてみよう


 逆転層はその出来方、成立の仕方によって数種類に分けられます。ひとつが接地逆転層・放射性逆転層です。今の季節、快晴に近い晴れ、風が弱く暖かな日、このようなときは夜間に上空の冷たい空気が地上付近に降りてきて、地表付近の空気が冷たくなってしまうことがあります。このような大気の状態を接地逆転層と呼びます。もうひとつ、パラグライダーのフライヤーが知っておかなければならないのは沈降性逆転層です。これは高気圧の下降気流が断熱圧縮を引き起こして発生します。今回とりあげるのは、接地逆転層です。
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 テイクオフからみた風景ですが、よく観察するとしろいもやもやが地表付近に漂っているように見えます。これが接地逆転層です。パラグライダーでサーマルソアリングをするためにはあたたまった空気が上昇する必要があります。この逆転層では地表付近が冷たく、そして標高が高くなるにつれて気温が上昇しますから、暖かい空気(周囲よりも軽くなった空気)があがっていくためにはより温度が上昇する必要があるのです。


実際に飛行中の映像を見ると、赤城山の方角が明確ですが、くっきりと白くもやがある層とくっきりと透明な層の二つがわかると思います。

それでは実際に温度を測ってみよう!


 さて、それでは実証しましょう。用意するのは温度計。これだけです。これをテイクオフとランディングの日陰になる場所に設置します。フライヤーの皆さんに協力してもらい、テイクオフするときに必ずランディングに無線を入れてもらいます。このときのテイクオフとランディングの気温を測定します。
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 こちらが08:00のランディング(ショップ前の日よけ)の気温です。10.5度でした。今朝はだいぶ冷え込んで、車のフロントガラスに霜が降りるほどでしたが、この時間になるとどんどん気温は上昇するようです。少し時刻がずれますが、このままテイクオフへと上がってみます。
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時間のずれは約30分ほどでしょうか、こちらが08:30ごろです。明らかにテイクオフの方が暖かく感じます。テイクオフの気温は13.3度でした。ここで気温減率を考えてみましょう。気温は100メートルごとに0.65度温度が下がります。ランディングからテイクオフまでは約400メートルありますから、2.6度温度が下がっているのが通常です。つまり本来ならば7.9度がテイクオフの気温であるはずです。ところが実際に測定してみると13.3度、通常の気温減率に比較して5.4度も気温が高いことがわかります。
 気温測定後のフライトが先ほどの映像です。パラグライダーはほとんど揺れることもなく、静かにフライトその後ランディングしました。もちろん、獲得高度はありません。 

気温の推移を見てみよう


 すこし、時間がたって10:30ごろです。
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ランディングの気温はわずか2時間で5度ほど上昇し、15.3度に達しました。同時刻のテイクオフの気温はどうなったでしょうか?
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 テイクオフの気温は15.9度。ほとんど温度差がない状態まで変化してきています。気温は地表に接している箇所から徐々に上昇を始めます。日射エネルギーに関してはテイクオフもランディングもほとんど差がなく、同じように暖まっていくことがわかります。この時刻から一般のパイロットの方のフライトが始まりました。パラグライダーはわずかなリフトの兆候をみせ、すこしゆれるものの、高度を獲得することはなく、ほどなくランディングしました。



気温の上昇がもたらすものは?


 時間はさらに経過して、12:00です。本日は10月31日ですから太陽の南中高度はだいぶ低いですね。それでも、太陽が高くなるにつれ、熱エネルギーの伝わり方が変化してきます。太陽が真上から照らすにつれて、地表は斜面よりも熱効率が向上するようです。
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 気温は18.8度に達しました。計測を開始してから約9度気温が上昇したことになります。同時刻のテイクオフはどうでしょうか?
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 気温は17.2度です。ここではじめてランディングの気温がテイクオフの気温を上回ったことになります。このような気温の状態になれば、地形や風向などによって、より効率よく熱エネルギーが伝わり暖まる地面がでてきます。そこに隣接する空気は、周囲の空気にくらべて早く暖まることになり温度差を生じさせます。サーマル(熱上昇気流)のはじまりです。
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 この時刻を過ぎてテイクオフしたパラグライダーはサーマルをとらえて上昇を始めます。サーマルソアリングの始まりです。
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データからわかること


 今回使用したのは温度計二つというごくごく当たり前すぎる道具でした。ただし実際に計測してみると、接地逆転層がどれほどの現象なのかよくわかります。ちなみに本日のサーマルトップはおよそ海抜1300mでした。なぜここでサーマルが止まってしまったのか?それにはちゃんと理由があります。写真を見てはっきりとわかるように雲が全く出来ない理由もちゃんとあります。今回は接地逆転層をとりあげるのと、データの焦点がずれるのでそこには触れませんが、上昇気流はなかなかどうして、不思議なものですね。
 今回は時間と気温の推移をふたつの温度計で測定しました。測定したからこそはっきりとわかることがあります。それは気温差です。サーマルソアリングが始まった時刻のテイクオフとランディングの気温差は1.6度でした。2度にもみたない温度差ですが、このような条件になればサーマル(熱上昇気流)は十分にあがる可能性があることがわかりました。そして反証データとしては、わずかでもテイクオフの気温が上回っているときはサーマルは発生するもの、パラグライダーが上昇するには至らないということです。当たり前のことかもしれませんが、知っているつもりで、それを深く掘り下げない人がほとんどです。
 みなさんも、ちょっと振り返ってみてほしいのですが、ご自身のバリオメーターに温度計がついていませんか?僕が調べたところ、ほとんどのバリオメーターに温度計がついていました。なるほど。必要性がよくわかりますね。
 どこかで聞いたようなこと。あるいは知っているつもりのこと。そんなことが以外にわからないままなのがパラグライダーかもしれません。一度、頭をすっきりとして、なんにも知らないつもりでパラグライダーのことを考えてみるのもよいものかもしれませんよ。それではまた次回!
 

グランボレのサーマルソアリング その6

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サーマルソアリングでは、グライダーのコントロール技術が重要です。そのためには、ハーネスのセッティングを適正に行い、姿勢を適正に保って、グライダーの動きを把握し、体重移動とブレーク操作で効率よくコントロールする必要があります。そのために、ハーネスのチェストベルトの調整が重要であることを前回までに解説しました。
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 旋回で重要な要素として、バンク一定、速度一定、滑りなしと言われます。これは、バンクや速度が変化すると、速度のエネルギーが変化して、上昇率の変化が把握しにくくなるためと考えられます。滑りなしというのは、翼に対して空気の流れが横滑りするようになり、翼の効率を落とすことを言います。パラグライダーでは極端な横滑りは翼のつぶれにつながり、大きな横滑りは起きにくいと考えられますが、旋回の効率やコントロール性を考えることは重要です。旋回のバンクを入れることをロールイン、バンクを戻すことをロールアウトと言います。
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 少し前の教科書によると、パラグライダーでは、ロールインを起こす要素は体重移動が影響していると言われてきました。しかし、最近のグライダーはアーチを大きくかけることによって、内翼のブレークを引くことで揚力方向が内側方向に変化し、ロールインの方向に揚力が働きます。一部のグライダーではチップラインといって、パラグライダーの翼端を引き込むことによって、ロールインの動きを起こすものもあります。つまり、グライダーにもよりますが、ブレークや体重移動によってどの程度ロールインが起こるのかを把握しておくことは重要です。
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 しかし、気流などの影響によってロールインが入りやすくなったり、入りにくくなったりします。この動きは常に地平線とグライダーの傾きの角度を見ながら把握することが必要です。セールプレーンでは、コックピットから進行方向と旋回方向を交互に見るようにします。パラグライダーのビデオを見ると、旋回内側でバンクを把握し、時折外翼も見上げるようにしているパイロットを見受けます。パラグライダーでは、これは翼のつぶれを気にしているのもありますが、外翼の動き具合でヨーイングの度合いをはかっていると考えられます。パラグライダーでバンクを一定に保つには、体重移動とブレークの操作、目線によるバンクの把握の他にもいろいろな要素がありそうです。旋回のコントロールは奥が深いですね。下の動画を観察してみてください。

 

それでは、次回その7では、サーマルを見つける気象判断、観察について考えてみましょう。

グランボレのサーマルソアリング その5

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 サーマルソアリングをするには、ハーネスのセッティングを見直して、グライダーをコントロールしやすい状態にしておくことが重要です。今回はこのハーネスのセッティングについて考えてみましょう。
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 通常よく使われる、座った姿勢でフライトするハーネスでは上の図のように、チェストベルトで体重移動の動きを調整するものが多くみられます。チェストベルトは標準的には、2つのカラビナの距離が40冂度になるように調整します。このカラビナ間の距離を長くすると、体重移動が大きくかかる分、サーマルなどで揺らされたときは体が大きくロール方向に揺らされやすくなります。逆に、チェストベルトを締めてカラビナ間の距離を短くすると、体は揺れない分、体重移動があまり入らなくなります。
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 最近のグライダーは特に操作性が向上しているので、体重移動をあまり大きく入れる必要はありませんが、やはり体重移動を入れたほうが、ロール方向にグライダーが動き、旋回に入れやすくなります。特に、サーマルの突き上げで旋回内側にロールが入りにくい時は、体重移動を内側に入れたほうがよいことになります。かといって、あまりカラビナ間の距離が開くと、大きく揺れたり、揺れが続きやすくなってしまいます。そのため、前述のようにだいたいカラビナ間の距離が40僂ら42僂らいが最適と言われています。
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 ABSベルトのあるハーネスでは、チェストベルトやレッグベルトにABSシステムがついています。これは、大きくロール方向に傾いたときに、重心が大きく傾かないように制限するもので、アンチバランスシステムと呼ばれています。チェストベルトにABSがついているものは、チェストベルトを締めることでABSが働き、さらにロールの安定度が増します。フットバーが付いたハーネスは、フットバーがABSの役割を果たし、フットバーを踏むことでロール方向の安定度が増します。逆に体重移動をするときは、旋回内側のフットバーを踏み、旋回外側のフットバーを緩めるようにしないとABSが効いて体重移動がしにくい形になります。フットバーやポッドハーネスはこのように足の力で、体重移動をサポートできるのですが、足の使い方に注意が必要です。

それでは、次回その6ではハーネスのセッティングと姿勢について、考えてみましょう。

グランボレのサーマルソアリング その4

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 前回までにサーマルソアリングでの旋回をする場合、グライダーの速度のエネルギーの変化によって、位置エネルギーが変化し、上昇率を誤認しやすくなることを解説しました。上昇率の誤認だけでなく、旋回をいかにスムーズにコントロールすることが重要です。今回はこのスムーズなグライダーコントロールについて考えてみましょう。
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 上の図のように、旋回をする時には翼を旋回内側に傾けることで、揚力を旋回内側に向けることになります。この内側に向けた揚力が、旋回外側に働く遠心力とつりあって、つりあいのとれた旋回になります。この傾き、バンク角が大きくなるほど、旋回半径も小さくなりますが、傾きが増す分、旋回のスピードや沈下速度も増していきます。サーマルソアリングの旋回では、バンク角が20度から30度程度であまり大きくバンク角をかけない方が、沈下が少ないといわれています。
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 サーマルソアリングの旋回中は、サーマルの突き上げや風の影響によって、バンク角が特に変化しやすくなります。同じ操作をしていても、バンク角が大きくなったり、小さくなったり、ピッチングも起きたりします。このグライダーのピッチ、ロールの動きを常に把握しながら、操作することが重要です。そのためには、目線を遠く地平線方向に置き、グライダーの動きをライザーを通して見ながら、ピッチ、ロールの動きを把握するとよいでしょう。この目線の取り方が非常に重要で、旋回内側の下の方だけを見ていたりすると、ピッチ、ロールの変化がわかりにくくなります。
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 グライダーのピッチ、ロールの動きを目線の取り方で常に把握し続けること。そして、グライダーコントロールに慣れてきた人は、耳で感じる対気速度の風切音や、ブレークコードから感じるブレークの重さなどで、かなりグライダーの動きがわかるようになってきます。このあたりは、常にグライダーコントロールを念頭に置いてフライトすることや、グランドハンドリングの練習でも身についてきます。また、ハーネスのセッティングも大きく影響してきますので、ハーネスのセッティングを常に見直してみるということも重要です。フライト中は常にピッチ、ロールのコントロールを心がけること、ハーネスのセッティングを見直すことで、ソアリング技術も上達します。

それでは、次回はハーネスのセッティングを考えてみましょう。

グランボレのサーマルソアリング その3

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グランボレでサーマルソアリングする場合、前回までにまずはミッドラン上空でサージ法を使ってソアリングする方法について解説しました。バリオメーターを持って入れば、上昇気流で上がったところでバリオの上昇音がなるので、上がるところがはっきり認識できるようになります。今回はこのバリオを使ったソアリングを考えてみましょう。
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 前述のようにサーマルに当たって旋回を始めると、風下側にサーマルからはみ出してしまうことがよくあります。
 この時に、サーマルの突き上げ、サージをめやすに旋回を修正していくのがサージ法です。バリオメーターを持っている場合は、ベストヘディング、ワーストヘディングという方法もあります。これは簡単にいうと、旋回の中でもっとも上昇率の良い場所、上昇率の悪い場所をめやすに旋回を修正する方法です。
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 まず、ベストヘディング法ではバリオの上昇音がもっとも強かった場所、上図のように上昇音が強かった場所の外翼方向に強いコアがあると考えられます。つまり、サーマルは中心部ほど強い上昇のコアがあるという考えに基づくものです。そうすると、この上昇音が強かった場所からさらに270度旋回を続けて、また3秒程度の直線飛行を入れて修正すればよいことになります。
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 ワーストヘディング法ではバリオの上昇音がもっとも弱かった場所、上図のように上昇音が弱い、または下降する場所の内翼方向にサーマルのコアがあると考えて修正します。この上昇音が弱かった場所からさらに90度旋回を続けて、また3秒程度の直線飛行を入れて修正するという方法になります。この3秒程度の直線飛行で注意すべき点は、バンクをかけた状態から直線飛行に戻すと、沈下率と速度が変わり、上昇が一時的に強くなるので、サーマルの上昇率を誤認しやすくなることです。
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 これはスティックサーマルとも呼ばれますが、速度の速い状態から遅い状態になることで速度のエネルギーが位置エネルギーに変化し、一時的に上昇するわけです。当然バリオも勢いよく上昇音がなりますが、この上昇はサーマルの上昇だけではないことに注意が必要です。特に風下から風上に向きを変えた時に旋回のバンクを緩めるとこのスティックサーマルの上昇にだまされやすくなります。対策としては、グライダーのピッチ、ロールと速度を極力スムーズに変化させること、バンクをかけた旋回からはスムーズなロールアウトを心がけることです。

 このサーマルの中でピッチ、ロールをスムーズに変化させるのが、グライダーコントロールの重要な技術になってきます。次回、その4はこのコントロール技術について考えてみましょう。

グランボレのサーマルソアリング その2

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 サーマルソアリングの旋回は、サーマルに当たったら3秒程度直線飛行をしてから、旋回に入ります。これは、上がり始めてすぐに旋回を初めてしまうと、すぐにサーマルからはみ出してしまい、下降してしまう可能性が高くなるためです。左右どちら側に回るかというと、より風上側に旋回をはじめたほうが上がりやすいのですが、奇数日左旋回、偶数日右旋回というルールがありますので、風上方向を常に意識しておき、サーマルに当たったらまず風上側に向けていくようにします。風下側に流されるとサーマルから外れやすくなるので、まずは風上側に向けて、サーマルの大きさを探るわけです。直線飛行で上昇が3秒ほどとれないようなら、サーマルが小さいので旋回は中止します。
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 逆に大きいサーマルや風が強めの場合、風上に3秒以上直線飛行をとっても、まだピッチアップが続く場合などはピッチアップが収まるまでさらに風上に伸ばした方がよいといえます。グライダーがピッチアップをするというのは、前方にサーマルの強い部分があることになるので、大きいサーマルの場合はピッチアップがしばらく続くことがあります。たいていのサーマルはサーマルの入り際にピッチアップしますが、これをサーマルのサージとよんでいます。サーマルのサージやピッチの変化を感じ取ることがまず重要ですが、そのためにはハーネスにしっかりとすわり、遠くに目線を置いて、グライダーの動きやブレークの重さを感じ取ることです。
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 このサーマルのサージを感じたら、3秒程度の直線飛行をとってサーマルの強い方向に修正します。これをサージ法と呼んでいますが、バリオがないときやソアリング初心者の方にはわかりやすい方法です。サーマルのサージやグライダーの動きを感じ取るということはソアリングをする上ではとても重要です。ただ、ゆっくり上昇するときや上昇から外れたときは、バリオメーターがないと感覚だけでは認知しにくくなります。

次回、その3ではバリオメーターを使った、ソアリング技術を考えてみましょう。

パラシュートのリパックについて

カテゴリ:
para


春らしいコンディションになってきました。
久しぶりのフライトになる人もいるようです。
パラシュートのリパック期限が切れている場合は飛行できません。

パラグライダーのハーネスに装着したレスキューパラシュートは、間違いなく最後の手段です。

パラグライダーのフライトは完全な自然の状況下で行われており、これを制御したり、これを完全に予測、把握することなど絶対にできません。多くの優れたパイロットは豊富な経験と知識に基づいた判断でこの状況に対応しています。しかし、どんなに優れたパイロットでも人である以上、未来に起こる現象を一つも違わず予測することは不可能です。

したがって、不測の事態に対応すべく、我々パラグライダーのフライヤーはいくつもの安全装置を装備してフライトします。それは安定飛行を回復させやすいパラグライダーであり、レスキューセットであり、ハーネスのプロテクターであり、レスキューパラシュートです。もちろんこれらの装備を駆使できる技術と知識が必要になります。

パラグライダーが異常な飛行状態に陥ったときに何をどうすればよいのか?
これは、その状態によって様々です。さらに対処を難しくするのは時間の経過とともにパラグライダーの状態も変わっていき、正しい対処方法が変わっていくことです。つまりは本当に難しいものです。

パラシュートはこのような状況下に自分が陥ったときに、迷うことなく、直ちに使用を決断すべきものです。そしてパラシュートはそのような危機的な状況から安全な着陸を担保できるように装備されていなければ何の意味もありません。

パラグライダーの安全を最終的に守れる可能性があるのはパラシュートだけです。自分の技術や経験を越える事態だから、パラシュートを使用しなければならないのであって、このような状況下で技術や経験など何の意味もありません。

そして、定期的なメンテナンスを欠いたパラシュートは安全装置としては意味をなしません。ハーネスから取り出せるかどうかも確かではない、キャノピーの状態がどのような状態かも不明瞭な状態のパラシュートがパラグライダーのフライヤーにとって安全確保の最終手段なわけがありません。


これはリパックの最後の作業。もっとも引き出しにくい状態を想定して引き出しテストを行います。このときは、右にグリップがあるハーネスで左手でのテストを実施。当然引く方向が自由にならないため確実に引き出せる状態でないとパラシュートは出ない。

150日はリパックの最終期限です。リパックはハーネスにパラシュートが装着された状態を確認することから始まり、すべての作業をプロトコルにのっとって点検を行います。ただパラシュートを収納しているのではありません。だから150日という期間は短くなる可能性があります。もちろんパラシュートを使用したときは直ちに。ひどくぬれてしまった時。砂地などに不時着して異物の混入が疑われるとき。このようなパラシュート状態は直ちに点検されるべきです。

リパック期限の確認は簡単です。
JPAのリガーがリパックしたパラシュートには必ずタグがついています。
このタグにはリパックをした期日と次にリパックをするべき期日が記入されています。
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150日が期限です。約5ヶ月です。
ちなみに今年からは赤いタグがついています。
飛んでからリパックもおおきな間違いです。飛ぶ前にリパックが当たり前です。

最後にフライヤーの皆さんを守れるはパラシュートしかありません。
150日のパラシュートリパックに関するお話でした。







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