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パラグライダーQ&A第12回

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 さて唐突ですが、みなさんは飛行することができますか?
もちろん、初めての高高度飛行を終えた講習生からベテランパイロットまで、パラグライダーのフライヤーであれば、YES! みなさん飛べるはずですよね。
 しかし、本当にそうなんでしょうか?最近グランボレでは、ヒューマンエラーについての講習を実施しています。こちらはパイロットコースに在籍している講習生の方を対象として実施しています。理由は明確です。パラグライダーのパイロットとして本当に知らなければならないことは、従来の講習、技術や知識に関する講習だけでは得られないことがわかってきました。ボクは事故を減らしたい。できれば無くしたい。その気持ちを込めてこの講習を行っています。
 このヒューマンエラーですが、ヒューマンエラーブックについて通読したことがない方はぜひ一読をお勧めします。事故がおこることはがんばって防げるような精神的、肉体的な努力や負荷で達成できる物ではないことが良く理解できます。その教科書の最後に次のような文章が書かれています。引用します。
 「本来、空を飛ぶようにはつくられていない人間が、知恵と努力によって大空を舞うことができるようになりました。しかし、それは人が作った道具によって飛べるのであって自らの体が飛べるようになったわけではありません。人間の知力が人の能力を上回る性能を持つ道具を作り出すたびに、そして道具の性能と人のそれとの差が大きくなればなるほどとても便利な道具と評価され、使う人に大きな満足感を与えてきました。一方で、人の持つ能力と、道具の性能差が大きくなればなるほど、それを操作する者に様々なストレスを与えてきたことも事実です。中略
 パラグライダーとヒューマンエラーという問題は、人の体に飛行機能が備わることがない限り、繰り返して論じられるべきものと思います。」


 私たちフライヤーはパラグライダーという道具があるから飛べるのであって、身体の運動能力にせよ、空気や温度の感覚にせよ、視力にせよ、その本来備わった能力では、絶対に空を飛行することはできない動物であることを知らなければなりません。つまり身につけた技能は、飛行する能力ではなく、飛行するための道具を操作、使用する技能に過ぎないのです。そこで、今回取り上げるのはテイクオフを取りやめる技術についてです。最近のベーシックコースの課程ではかならず練習するのですが、具体的にどのような技術なのでしょうか?
 

パラグライダーのテイクオフで必要なこと


 テイクオフという地形は、そこに人間の都合が介在している以上はかならず離陸しやすいように修正されているケースがほとんどです。つまり、パラグライダーの滑空費よりもおおきな斜度になるように作られています。このことは必然として、離陸はしやすいが止まりにくい。いざテイクオフを取りやめようと思ってもなかなか止まりにくい。このことをあらかじめ知識としては知っておかなければなりません。
 そこに、最近のグライダーの高性能化です。パラグライダーの性能の向上は良く飛ぶということ以外に、ユーザーが優しく扱えるように、ミスコントロールを許容するように作られてきています。このことは一見すると良さそうですが、何においても完璧な技術など存在しません。失速しにくい翼は、テイクオフ時に取りやめようと思っても、飛ぼう飛ぼうとしてなかなか思うように止まれないものです。
 そこに人間独特のエラーが付け足される可能性は常にあります。パラグライダーのライントラブルです。ここでは空力的な解説まではしませんが、次の事実をみなさんは知っておく必要があります。
それは、「一日のフライトを通じて、誰もラインが絡んでいない、そんな日はほとんどない」という事実です。もちろん、飛ぶ人が少ない平日などに、何事もなく終わることもありますが、土曜日、日曜日、そんな日はたいていラインが絡まった状態でテイクオフするグライダーが必ずいます。身に覚えがある人はまだ良いのです。このような人は次に備えようとするでしょう。そうでない人は要注意です。
 プレフライトチェック、スタートチェック、このような言葉とテイクオフゾーンで交わされるルーティンは意味のないものではなく、事故を未然に防ぐために考え出された方法です。
 それでも、ラインチェックに不備があったり、あるいはその他の事由で止まらないとならない場合はどのようにすれば良いのでしょうか?

 このデモでは、ラインは完全にクラバット(パラグライダーのラインがキャノピーをくぐっている)していますね。演技者はまずライズアップ時に左右のライザーから伝わるテンションで何らかの異常を察知します。グライダーが大きく傾こうとする挙動をかなり早い段階でつかんでいます。次に頭上に安定させようと試みます。パラグライダーのテイクオフで最も重要なのがこの頭上に安定すると言うことです。しかし、頭上に動いていくグライダーはもはや安定することはなく、目視でもパラグライダーのクラバットが明確に見て取れます。この段階でテイクオフを取りやめます。助走としては減速を開始、そして一方のブレークコードでパラグライダーを斜面に向かわせるように操作します。斜面に向かうようにパラグライダーを操作することで、パラグライダーの滑空費と斜度の関係を断ちます。つまりどうあってもパラグライダーが飛び立つことができない方向へパラグライダーを向けて停止させるのです。

確実に停止できる技術とは


 デモ演技はあまり緊迫感がなくて伝わりにくいのですが、このような状況でも飛び出してくるパラグライダーはあります。これは事実なのです。おそらく、ただのパラグライダーのライズアップ時における傾きぐらいに考えて、無理矢理修正し、頭上安定もさせずに闇雲に走れば、この状態でもパラグライダーは飛びます。しかしその後は、旋回しようとするパラグライダーに四苦八苦しながら、場合によってはツリーランすることが安全のために優先されるでしょう。つづいて次の演技もご覧ください。

 パラグライダーのDラインが絡まった状態でライズアップを始めています。演技者は先ほどよりは少ないが、左右のライザーから伝わるテンションに異常を感じています。ステップの方向によって傾きを修正しようとしますが、この時点でパラグライダーの状態の異常を疑い始めます。そして頭上安定をさせることが不可能であると判断し、すぐに停止動作に入ります。ここでも、頭上安定をさせられないパラグライダーでテイクオフはしないということを貫きます。これらの演技を通じて共通しているのは、
.薀ぅ好▲奪廚僚蘰阿妊謄鵐轡腑鵑琉枉錣魎兇犬討い襦
通常の状態(パラグライダーがということ)であれば問題なく上がってくるはず。
つまりパラグライダーの挙動に疑いを持つ。
い修里燭瓩棒簑个防要以上に加速をしない。
テ上安定で確実にパラグライダーを目視する。
Δ垢阿気洌貶のブレークコードで停止動作を実践する。

完全なテイクオフは安全のため


 つづいて次の演技をご覧ください。

 こちらは、パラグライダーに何の異常もありません。そのことは映像を見て頂ければわかると思います。ではなぜ、停止動作に移行しているのでしょうか。ここまで読み進めて頂いたのであれば、その理由に思い当たるかもしれません。
「頭上安定が不十分である」これがテイクオフをとりやめた理由です。
演技者は異常を感じることなく、ライズアップを完了しようとしています。しかし、頭上安定に移行しようとするとき、予想をしていたポジションにグライダーが安定することなく、すこし下がってしまいました。そのため、頭上安定が不十分、必要なパラグライダーの目視確認もできませんでした。つまり飛行決心をすることなく、停止の判断をしたのです。このまま加速を続ければパラグライダーは大きなピッチングをともなってテイクオフすることが予想されます。テイクオフ直後は、もっとも危険な高さです。それを避けるために、中止を選択したというわけです。テイクオフはあらゆる意味で可能性にかけてはいけません。頭上安定で飛行への確信をもつこと。これだけです。
 今回はテイクオフで停止することを取り上げました。このことについて、上手に止まることができました。という評価をあまり聞きません。それは技術的な課題が、上手にテイクオフをすることを中心に講習されてきたためです。しかし技術を身につける真意はやはりその本当の意味を見失ってはならないと思います。上手に出るためのテイクオフの技術が安全であるために必要であるなら、一方で確実に停止できる技術を身につけておかなければそれは技術としては未完成です。
 みなさんも、ちょっとコンディションが渋いときなどに広い講習ゲレンデで練習してみることをおすすめします。当然ですが、人間にこのような技術がはじめから備わっていることはありません。練習でできないことは、本当に必要な時にその技術が発揮されることはありません。ちょっと堅い話になってしまいましたが、今回もご一読ありがとうございました。



 

パラグライダーQ&A第11回

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 久しぶりになってしまいましたが、好評につき?再開したいと思います。ブログを更新していると、人気の記事として「パラグライダーQ&A」が上がってくるときがあります。読んでいただけて本当に嬉しいです。そんなマニアックかつディープなファンのためにも不定期ながらも続けていきたいと思っていますので応援よろしくお願いします。
 今回は11回記念および再開記念ということでお届けします。先日、フィールドジョイの長島さんを講師としてソアリングセミナーが開催されました。参加者の熱心な態度、意欲の高さ、そして受講後の晴れやかな表情がとても印象的でした。わたしも深く感銘を受けた次第です。そのセミナーでは逆転層についてかなり詳細な講習があり、受講生のみなさんもお話を聞き逃すまいとしておられました。
 パラグライダーは空を飛行するスポーツであり、そしてその最大の魅力はソアリング(上昇気流をつかまえて長い時間滑空し続けること)にあると思います。いうまでもなく、そのエネルギーは自然に由来するものです。上昇気流にはさまざまな種類がありますが、ここでは熱エネルギーによって生まれる暖められた空気、すなわちサーマル(熱上昇気流)についてを取り上げようと思います。
 サーマルについて、かつてパラグライダーの世界チャンピオンになったブルース・ゴールドスミス氏はこのように述べています。
 「この強力だが、目に見えない自然の力との遊び方を知っているのは、私たちと美しいソアリングバードだけだ」ー引用サーマル・フライング、序文より
 ソアリング、サーマルについて触れるといってもあまりに抽象的になりすぎますし、先述したサーマルフライングより優れた教科書にすでに述べられているとおりですが、そこはみなさんの「パラグライダーQ&A」です。逆転層(接地逆転、放射性逆転層)についてアカデミックかつサイエンス・スピリット満載?でお届けしましょう。

逆転層をみてみよう


 逆転層はその出来方、成立の仕方によって数種類に分けられます。ひとつが接地逆転層・放射性逆転層です。今の季節、快晴に近い晴れ、風が弱く暖かな日、このようなときは夜間に上空の冷たい空気が地上付近に降りてきて、地表付近の空気が冷たくなってしまうことがあります。このような大気の状態を接地逆転層と呼びます。もうひとつ、パラグライダーのフライヤーが知っておかなければならないのは沈降性逆転層です。これは高気圧の下降気流が断熱圧縮を引き起こして発生します。今回とりあげるのは、接地逆転層です。
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 テイクオフからみた風景ですが、よく観察するとしろいもやもやが地表付近に漂っているように見えます。これが接地逆転層です。パラグライダーでサーマルソアリングをするためにはあたたまった空気が上昇する必要があります。この逆転層では地表付近が冷たく、そして標高が高くなるにつれて気温が上昇しますから、暖かい空気(周囲よりも軽くなった空気)があがっていくためにはより温度が上昇する必要があるのです。


実際に飛行中の映像を見ると、赤城山の方角が明確ですが、くっきりと白くもやがある層とくっきりと透明な層の二つがわかると思います。

それでは実際に温度を測ってみよう!


 さて、それでは実証しましょう。用意するのは温度計。これだけです。これをテイクオフとランディングの日陰になる場所に設置します。フライヤーの皆さんに協力してもらい、テイクオフするときに必ずランディングに無線を入れてもらいます。このときのテイクオフとランディングの気温を測定します。
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 こちらが08:00のランディング(ショップ前の日よけ)の気温です。10.5度でした。今朝はだいぶ冷え込んで、車のフロントガラスに霜が降りるほどでしたが、この時間になるとどんどん気温は上昇するようです。少し時刻がずれますが、このままテイクオフへと上がってみます。
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時間のずれは約30分ほどでしょうか、こちらが08:30ごろです。明らかにテイクオフの方が暖かく感じます。テイクオフの気温は13.3度でした。ここで気温減率を考えてみましょう。気温は100メートルごとに0.65度温度が下がります。ランディングからテイクオフまでは約400メートルありますから、2.6度温度が下がっているのが通常です。つまり本来ならば7.9度がテイクオフの気温であるはずです。ところが実際に測定してみると13.3度、通常の気温減率に比較して5.4度も気温が高いことがわかります。
 気温測定後のフライトが先ほどの映像です。パラグライダーはほとんど揺れることもなく、静かにフライトその後ランディングしました。もちろん、獲得高度はありません。 

気温の推移を見てみよう


 すこし、時間がたって10:30ごろです。
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ランディングの気温はわずか2時間で5度ほど上昇し、15.3度に達しました。同時刻のテイクオフの気温はどうなったでしょうか?
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 テイクオフの気温は15.9度。ほとんど温度差がない状態まで変化してきています。気温は地表に接している箇所から徐々に上昇を始めます。日射エネルギーに関してはテイクオフもランディングもほとんど差がなく、同じように暖まっていくことがわかります。この時刻から一般のパイロットの方のフライトが始まりました。パラグライダーはわずかなリフトの兆候をみせ、すこしゆれるものの、高度を獲得することはなく、ほどなくランディングしました。



気温の上昇がもたらすものは?


 時間はさらに経過して、12:00です。本日は10月31日ですから太陽の南中高度はだいぶ低いですね。それでも、太陽が高くなるにつれ、熱エネルギーの伝わり方が変化してきます。太陽が真上から照らすにつれて、地表は斜面よりも熱効率が向上するようです。
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 気温は18.8度に達しました。計測を開始してから約9度気温が上昇したことになります。同時刻のテイクオフはどうでしょうか?
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 気温は17.2度です。ここではじめてランディングの気温がテイクオフの気温を上回ったことになります。このような気温の状態になれば、地形や風向などによって、より効率よく熱エネルギーが伝わり暖まる地面がでてきます。そこに隣接する空気は、周囲の空気にくらべて早く暖まることになり温度差を生じさせます。サーマル(熱上昇気流)のはじまりです。
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 この時刻を過ぎてテイクオフしたパラグライダーはサーマルをとらえて上昇を始めます。サーマルソアリングの始まりです。
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データからわかること


 今回使用したのは温度計二つというごくごく当たり前すぎる道具でした。ただし実際に計測してみると、接地逆転層がどれほどの現象なのかよくわかります。ちなみに本日のサーマルトップはおよそ海抜1300mでした。なぜここでサーマルが止まってしまったのか?それにはちゃんと理由があります。写真を見てはっきりとわかるように雲が全く出来ない理由もちゃんとあります。今回は接地逆転層をとりあげるのと、データの焦点がずれるのでそこには触れませんが、上昇気流はなかなかどうして、不思議なものですね。
 今回は時間と気温の推移をふたつの温度計で測定しました。測定したからこそはっきりとわかることがあります。それは気温差です。サーマルソアリングが始まった時刻のテイクオフとランディングの気温差は1.6度でした。2度にもみたない温度差ですが、このような条件になればサーマル(熱上昇気流)は十分にあがる可能性があることがわかりました。そして反証データとしては、わずかでもテイクオフの気温が上回っているときはサーマルは発生するもの、パラグライダーが上昇するには至らないということです。当たり前のことかもしれませんが、知っているつもりで、それを深く掘り下げない人がほとんどです。
 みなさんも、ちょっと振り返ってみてほしいのですが、ご自身のバリオメーターに温度計がついていませんか?僕が調べたところ、ほとんどのバリオメーターに温度計がついていました。なるほど。必要性がよくわかりますね。
 どこかで聞いたようなこと。あるいは知っているつもりのこと。そんなことが以外にわからないままなのがパラグライダーかもしれません。一度、頭をすっきりとして、なんにも知らないつもりでパラグライダーのことを考えてみるのもよいものかもしれませんよ。それではまた次回!
 

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 目標にしていた10回を迎えました。もちろん、これでおしまい!ということではありません。たまにメールをもらったりしますが、本当に励みになります。読者が一人でもいらっしゃればテーマをひねり出して続けて行きます。もちろん、こんなことを取り上げて欲しい。そんな時は遠慮なさらずにどんどんおっしゃって下さい。必ず取り上げていきます。
 今回はそんな、読者の方からの質問に答える形で書き進めていきます。質問はこうでした。「パラグライダーのブレークコードってどうやって持つのが本当なんですか?」なるほど!これぞいいね!!ですね。パラグライダーの見落としがちな技術ポイントにフォーカスしてマニアックな考察を行うのが本企画ですから、願ったり叶ったりのテーマをいただけたものです。
 操作のすべてを司るパラグライダーの唯一のコントロールコード。日本語にするとブレーキを掛けるような印象を持ってしまいがちですが、これほど重要なコーントロールなのに、なぜか持ち方が曖昧としているのも事実です。曖昧と言うよりも人によって千差万別という表現が正しいかもしれません。今回は、このことについて触れていきますが、重要な前提を書いておきます。ブレークコードの持ち方はつり革を持つようにグリップを握る。これは正しい持ち方です。その根拠はもっとも視覚した際に持ち方を認識しやすいことが一つあります。デザインですね。見たとおりに直感的に持てるようにデザインされていると言うことはそのように持つことが前提にあるのです。二つ目の根拠はパラグライダーの認証試験におけるテストフライトはすべてこの持ち方に準拠して実施されているからです。さまざまな飛行状態試験、たとえばどのぐらいの引き具合で失速するとか、あるいは緊急降下手段としてBストールを行うときに不具合が生じないかとか、そのような試験を実施するときはきまった持ち方でフレークコードのストロークをはかります。つまり、まず教わる最も基本的でわかりやすい持ち方、パラグライダーのブレークコードをつり革のように持つ、このことは正しい持ち方ですから誤解しないで下さいね。

パラグライダーのブレークコードを調節して良いのか?


 早速ブレークコードの持ち方云々について書いていきたいのですが、基本知識として確認しておくことがいくつかあります。まずは、ブレークコードについていくつかの重要事項を確認するとしましょう。
 一つ目は調節についてです。ブレークコードにつながっているライン、ブレークラインを自分勝手に調節してはいけません。よく見られる間違いは、ブレークラインを短くする調節です。確かに短くすることでハンドリング(ブレークコードの反応)が上がったかのように感じますが、この調節は重大な危険要素をはらんでいます。パラグライダーが滑空しているときに、ブレークコードをもっとも引いていない状態、つまりプーリー(滑車)に接触している状態にすると、かならずブレークラインが空気抵抗で後ろにたわみ、余っています。ブレークラインを短く調節する人はこのあまりを不要な余りと捉えて、操作性を阻害する要因と認識しているようなのですが、重大な誤りです。このブレークラインの余りはパラグライダーの安定飛行になくてはならない要素です。重要なポイントなので詳細に現象を書きますが、一つ目はこの余りがなくなると、パラグライダーが本来持っている前後軸の動き(ピッチング)が正しく起こらずに、失速する可能性があります。この阻害要因はパラグライダーを失速に入りやすくするだけではなく、同時に失速から回復しにくくする現象を引き起こします。これは通常の飛行時には起こりにくいのですが、ビッグイヤー(両翼端折り)、Bストールなどの効果手段を行ったときにその失速しやすく、失速から回復しにくい特性が顕現します。つまり、パラグライダーの迎角が大きくなるときに顕著になります。ですから絶対に短く調節することは避けなければなりません。二つ目は、このブレークコードの余りが果たしている、あまり知られていない一つの役割についてです。それは、この余りが飛行機の翼にたとえると尾翼の役割を果たしていることなのです。ご存じのように飛行機には主翼、尾翼、垂直尾翼とそれぞれ役割の違う翼が備わっています。鳥の翼もその翼によって揚力を持たせる箇所、推進力を生む箇所と役割があるそうです。そして空中をダイナミックに滑空する鳥はきちんと尾羽が備わっています。パラグライダーは特殊な翼で、前後安定を振り子という重力効果で保っていますが、尾翼に相当する部分がないわけではないのです。それが、ブレークラインが余っていることによって起こるピッチ安定(前後に安定する)効果なのです。この余りを切ってしまって飛行すると、本来パラグライダーの翼が自律的に発揮できる安定した前後バランスを失ってしまいます。現象としては不思議なことにより前方向に移動しようとします。これは、おそらく湾曲した翼の上面を空気が流れるために、空気の流速が上がるためではないかと思います。これは、経験則なので間違っているかもしれませんが、ピッチングのトレーニングを大きく行うときに恐怖心からブレークコードをわずかに引いてしまうと、余計にパラグライダーが前方へピッチングし、なおかつ潰れやすくなる、そんな経験をしたことがあります。この現象(パラグライダーの尾翼効果)は、速度の速いグライダー(滑空性能が高い)の方が現れ方が明確です。
 このようにパラグライダーのブレークコードの余りはとても大切な役割を果たしていますので、操作性が悪いからと片付けてしまって良いものではないのです。パラグライダーのブレークコード調節はインストラクターにお任せしましょう!ほとんどの場合は調節不要ですが、どうしても必要な場合は専門家に任せましょう。

パラグライダーのブレークコード持ち方あれこれ


 みなさんはどの様にパラグライダーのブレークコードを持っていますか?最初に教わったとおりに基本に忠実に持っている、僕はこんな持ち方をしている、あるいはあんな持ち方している、いくつかの持ち方を実際に検証してみましょう。良いところがあったり悪いところがあったりです。これはブレークコードの持ち方に限ったことではありませんが、どんな技術にも良いところもあれば反対に欠点もあります。そのことを知った上でブレークコードの持ち方を考察する方が正しいと思います。
 基本的な持ち方。グリップをそのままに持つこと。この方法は直感的でわかりやすく、間違いのない、優れた持ち方です。必要以上にブレークコードが短くならないので、そのままビッグイヤーやBストールと行った効果手段を実施することが出来ます。やはり基本技術は大切ですね。ですからインストラクターも最初は必ずこの方法を指導します。ですが、この持ち方で実際に飛んでいる人は意外に少ないですね。もちろん、全員に聞いたわけではありませんが、僕が聞いた限りでは少なかったです。これは、この持ち方の特質である、ブレークコード必要以上に短く持ちすぎないことが反対にデメリットに転じているからなのかもしれません。それとあわせて次の持ち方を考えてみましょう。
 ブレークコードに手を通して少し短く持つ方法。僕が話を伺った限りではこの方法で持っている人が非常に多くいました。よく「ワンラップ」すると言います。グリップに手を通して持つことでグリップが手の甲に引っかかり握る力が必要でなく、楽にブレーク操作が行えること。また、ブレークコードが短くなることでブレーク操作の初動から反応までの時間差を小さなものにすることが出来る。などがプラスに働いているのだと思います。効果的な持ち方なのですがデメリットもあります。この持ち方はブレークコードのグリップに手を通していますので、いざというときにブレークコードから手が離れなくなる可能性があります。もっとも考えなければならない状況は緊急用のパラシュートを使用する決断をしたときす。このような場合に備えて、素早くグリップから手を離せる練習を積んでおく必要があります。なかには、飛んでいるときに一度もパラシュートのグリップ位置を確認したことがない人もいるかもしれません。久しぶりのフライト時にはかならずパラシュートのグリップを確認する癖を習慣化したいものです。その際、このワンラップという持ち方をしている人はグリップから素早く手を抜くことを意識しましょう。それからブレークコードを短く持っているということは、沈下速度が増すときは注意が必要です。とくにこのグリップのままビッグイヤーやBストールを行うことは危険ですのでオススメしません。ブレークコードが余っていない状態は大変に危険だと言うことを忘れないで下さい。必ず通常のグリップに戻し、ブレークコードが一番長い状態で効果手段を実施する必要があることをお忘れないように。
 最後に紹介するのは、可能な限りブレークコードを短く持つ方法です。工夫した方法がいくつかあります。ブレークコードグリップの最上部に別のグリップポイントが備わっているブレークコードグリップなどもオプション装備として販売されています。グランドハンドリングが大好きで得意なフライヤーの大部分はブレークコードを直接持つことで(グリップごと握って)操作をしています。アクロバットを好むパイロットの大半はブレークコードを通常のグリップで握った後にもう一度ひねることでブレークコードを短い状態で持つ方法を実践しています。これらに共通するのはブレークコードの余りは決してなくさないが、可能な限り短いストロークでブレークコードを操作し、さらに手を高い位置に置くことにあります。この方法は別のメリットもあります。グリップに手を通していないので、いざというときはパラシュートを使用したりラインを切断するためにブレークコードから手が離すことができます。優れた持ち方のようですが、非常に短くブレークコードを持つことは、引く操作以外にグライダーの状態を感知して手を上げる(ブレークコードを戻す)という操作が頻繁に必要です。そのため数ある持ち方の中でも繊細な感覚と飛行状態を正確に捉える感覚の双方を必要とします。操作性と引き替えに難易度が高い持ち方で、ブレークコードの正確性を欠いた操作を行うと簡単にパラグライダーが失速する危険性をはらんでいます。

パラグライダーのブレークコードの持ち方に絶対はない?


 代表的な持ち方を順番に紹介してみました。気づいた方もいると思うのですが、順番にブレークコードの長さが短くなっています。それと反比例して手を置く高さが高くなっています。操作性が高まっていくと同時に腕の長さが効率よく使用できるようになりますが、一方でブレークコードのプレッシャーの変化やパラグライダーの飛行状態に合わせた厳密な操作が要求されるようになり、操作の許容範囲が狭くなります。自分のブレークコードに対する感覚は第三者が客観的に評価することは非常に困難ですから、地道に練習して積み重ねていくしかありません。ミリ単位という一流のテストパイロットレベルとまではいいませんが、数センチの引き加減の違いには気づけるようになっておきたいですね。
 そこで、実践しておきたいのですが、自分のブレークコードが何番目から引き始められるかご存じの方はいるでしょうか?
 なんのことだかさっぱり分からない人は想像して下さい。まず、ブレークコードはブレークラインにつながっています。このブレークラインはほとんどのグライダーで次の構造になっています。すなわち、一番太いボトムライン、中間のミドルライン、最後のアッパーライン。このパラグライダーの翼に直接つながっているアッパーライン数本(4本から5本)のうち、どのラインが一番最初に引けますか?
 安定した空域の中でしたら、ゆっくりとブレークコードを引き始め、次のことを観察してみましょう。
1.はじめに、どのブレークラインが引かれ始めるのか。
2.どこまで引くとすべてのアッパーラインが引かれた状態となってブレークコードの余りがとれた状態になっているのか。
3.さらに引いてパラグライダーの翼後縁が曲がり始めてブレークコードにどのようなプレッシャーがかかるのか。
4.そこからもう少しはっきりとした重さを感じ、自分の操作がパラグライダーに伝わる感覚があるブレークコードの位置はどこか?
この4カ所はそれぞれに意味も名称もあります。
1.コンタクトポイント
2.トータルコンタクトポイント
3.ニュートラルポジション(説明が難しいがすこし、テンションがかかりブレークが戻ろうとする)
4.アクティブ操作ポジション(気流の変化などに即応するための操作ポジション)
となっています。さらに、
0.フルグライド(0%ポジション)ブレークコードが余り最高速度で飛行している状態
を入れれば5つのポジションが存在しています。これをブレークのプレッシャー(重さと反発の感覚といった方が適切でしょう)で捉えて操作を行います。
 これらを安定した気流の中で実際に試すことで、自分のブレークコードに対する感覚を鋭く、そして正しく理解しましょう。

パラグライダーのブレーク操作の実際を考えてみよう


 これはだれでも、すぐに実践できると思います。まずいすに座って手を上げます。これはパラグライダーのハーネスに座っていることを想定しています。このとき腕を上げてブレークコードを引く操作のシミュレーションを行ってみます。腕の動きに注目して下さい。ある高さからはブレークコードを引く動作ではなく押す操作に変わっていくと思いませんか。特に肩関節が硬い人(失礼!)は肘を後ろに引くような動きで肩胛骨を後方へ反らすような動き(弓を射る動作に似ています。)が苦手です。このような人はわりと高い位置でブレークコードを押すような操作に変わってしまいがちです。同じように手を下げる動きであっても高い位置から手を下ろすときは引くような動作です。反対に人間の手は肘より下に引けませんから、肩と肘をうまく使って引く動きが作れないとブレークコードを押し下げるような操作になってしまいがちです。このような操作は手首の関節や指先の関節など、ブレークコードのプレッシャー、重さや反発力などを敏感に察知する重要な部位を作動させなくしてしまいがちです。どうしても力みが強く出てしまい、柔らかくなめらかなブレーク操作に掛けてしまいがちです。うまく関節を動かしてなるべく引く操作でブレークコードをコントロールしましょう。手首と指は柔らかく、強く握らずに。

パラグライダーのブレークコードの持ち方を工夫する必要性とは?


 パラグライダーのブレークコードは様々な持ち方をしている人がいて、そしてよくよく考えてみると、いろいろな良い点や悪い点などがありました。そしてその人の技量や個性にうまく適応するかのように、習慣になっているので、これが良いとか悪いという話でもありません。
 あえて結論づけるとすれば、まずは基本に忠実に。そして繊細なコントロールを求めるためにグリップの握り方を工夫する。それぞれの持ち方のデメリット、メリットを知ること。その上で何よりもたくさんブレークコードに触ることが大切です。グランドハンドリングなどは、上達することでさらに繊細にブレークコードを操り、さらに、上達を重ねていけます。このような感覚は短時間でブレークコードの操作を習得するには効率の良い方法です。あれこれ考えることが終わったら、講習会場に出ていろいろと試してみたら良いと思います。ブレークコードの持ち方あれこれを。その中で、自分の感覚に適応するものを選んでいけば良いでしょう。
 ただし、目的と手段を取り違えないようにしましょう。あくまでも操作を向上させることが目的です。ブレークコードの持ち方はその手段にすぎません。手段が目的化してしまうと、練習が変な方向に行ってしまいます。ただし、試さなければ分からないことがあるのも事実。試して分かることがあれば、試してみれば良いし、試して分からなければこのことに固執する必要はありません。
 今回は、ブレークコードの持ち方という、ちょっと曖昧なことを細かくとりあげてみました。曖昧なわりに細かな操作が必要。それがブレークコードです。引くし戻す。タイミングを間違えると役に立たないばかりか致命的なミスコントロールにもつながる。重さも必要な量も変化します。ここで30センチ引いて15センチ戻すというような解説がなかな出来ないですからね。
 次回は旋回についてを取り上げます。あくまでも基本的な旋回についてです。ひとまずの目標をランディングアプローチに置いていますので、前回までに取り上げた直線飛行、旋回とつづけてランディングアプローチですね。特に旋回中はブレークコードの操作感に触れないわけにはいかないので、この機会にブレークコードに触れることが出来たのは良い機会だったと思います。直線飛行にあれほどこだわったわけも勘の良い人なら気づき始めているのではないでしょうか。それでは、今回もご一読ありがとうございました。
 

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 9回目の連載です。すこしだけ前回からの流れを振り返りながら今回のテーマについても触れてみることにします。前回はパラグライダーの直線飛行を取り上げまして、その飛行は非日常的な移動特性を持っているというテーマで記述をしました。その要点は、時間経過と風の影響によって常に変化を続けるために、自分自身の位置予測という特殊な能力を必要とするということに尽きます。パラグライダーは空間を移動するスポーツですから、この位置予測が非常に重要なのです。そして位置予測があまりにも非日常的であることについても触れました。そこで今回は位置を予測すること、そのためのパラグライダーの効果的なトレーニング方法について記述していきます。

パラグライダーのショートフライト1000本?


 パラグライダーのショートフライト(丘からのフライト)は非常に重要な練習です。いきなり結論から入りましたが、最近のパラグライダーはライズアップの特性が良く、つまり非常に簡単になってきていることと、操作性は容易になっているのに飛行性能は上がっています。つまりパラグライダーは人に優しい道具に進化しています。昔に比べて地上練習でパラグライダーの取り扱いに四苦八苦するような時間は少なくなりました。付け加えるとすれば、以前のパラグライダーはそれほど良く飛ばなかったために風速の影響を受けやすく、特にスクールのカテゴリーでは地上で十分に練習する時間があったのかもしれません。以上のようにパラグライダーの進歩をその主な理由として直線飛行を習得するための地上での練習時間を短縮してしまっているのかもしれません。私たちがパラグライダーを始めた頃に先輩によく言われた言葉があります。
 パラグライダーのライズアップは1000回。パラグライダーのショートフライトは1000本。この言葉は1000回でライズアップやショートフライトが出来るようになるということではありません。1000回ぐらいを目安として一つの技術的な進歩がある。そういう教えでした。まあ、絶対的な経験値に勝るものはないということなのでしょうが、詳細に構築された理論よりも一回のフライトの実経験のほうが勝ることもあります。しかし、このように考える人ならかならず練習には課題や目標が設定されているものです。そのような簡潔で明確な目標なしに1000回のライズアップを試みても、効果はさほどあがらないのではないでしょう。練習には目標が必要です。そのことが不明瞭なまま漫然と飛行を続けているのは技術的にはなかなか上達に結びつかないと思います。
 パラグライダーのショートフライトの練習は次のことを習得することにおいて高高度飛行よりも優れています。
1.空間の変化を予測するトレーニング。比較対象となる風景が近いために空間を想像しやすい。
2.正確な直線飛行のトレーニングに適している。これも目標地点をイメージすることが容易です。
3.偏流修正飛行の効率を高める。風の影響による飛行経路の修正に手間取ると、目標地点まで到達しないことがよく分かる。
4.繰り返し行うことで感覚と操作のずれを一致させることが出来る。
 一方で、高高度飛行でなければ身につけることが出来ないこともあります。
1.時間の経過とともに変化する割合が大きく一様ではないことを体感出来る。
2.より広大な空間を直接体感することが出来る。
3.地上よりも風の影響を直接に、長い時間にわたって受け続けることを経験できる。
4.見える風景などから総合的に自分の位置を把握するためのトレーニングができる。
双方ともに必要なトレーニングで、お互いを補完し合っていることがおわかりいただけるでしょうか。
やはり、技術は様々な側面を持ちますから、一通りのことだけが出来てもあまり通用しないことが多く、いろいろなトレーニングを通して経験を積むことが必要なのだと思います。ただし、パラグライダーを志す人たちは飛ぶこと(高高度飛行)は熱心です。当たり前です。飛ぶために始めたのだから。僕もそれで良いと思います。ただ、ちょっと技術的な壁かな?あるいは、もやもやとして漠然とした悩みのようもの、そんな悩みを抱えている時はショートフライトで気持ちよく汗をかいてみることが意外に解決する早道なのかもしれないですよ。

パラグライダーのショートフライトで偏流修正飛行を実践


 講習会場でターゲットを目標に斜面中段からのショートフライトを練習します。このとき、確実にターゲットを意識します。風向に関わらず飛行の方向のみ強く意識しましょう。これは、偏流つまり風によってパラグライダーが流される方向に対して、修正角という舵取りを行って直線飛行を行うトレーニングです。これは最近の性能の良いパラグライダーだと簡単にターゲットを超えてしまいますので、飛行角度を確かめるときにも有効なトレーニングです。これだけだとおもしろみに欠けますし、わざわざこの連載で取り上げることもありません。ここで記述したいのは次のことです。
パラグライダーのショートフライトでわざと風に流されてみる。高高度飛行でこんな基本セオリーに反することを白昼堂々と行うと、インストラクターから直ちに飛行経路を修正するような指示が飛ぶのでしょう。それはもちろん、ローター(乱気流)の存在や高度管理などいくつものリスク要因を避けるために仕方がありません。しかし、ここはショートフライト。そんな風による影響の違いを感じてみるには良い機会です。とくに東向きに風が吹いているときは飛行方向をターゲットより南に向けることで速度があがり、風に乗りやすく、飛行距離が伸びることを実感できるはずです。つまり、流されていることを感じ取れるはずです。もちろん最後はきちんと着陸動作を行う必要があります。風に向かう、風を斜めから受ける。このような風の影響の違いもショートフライトならばすぐに実感できると思います。このようなトレーニングも目標が近いからこそ確認が容易で何度も挑戦できるのです。
 技術に自信がある人ならば、次のようにこのトレーニングを行ってみるとさらに効果的です。まずはライズアップします。出来れば、リバースライズアップが出来るぐらいの風速が好ましい条件です。そのまま待ちます。もっとも偏流修正を必要としない条件を!これは、どちらかというと風を待っているのではなく、自分の操作を必要としなくなるような風の向きを待っている感覚です。だから吹き流しではなく、頭上にあるパラグライダーが傾かない、流されない(それに対応する操作が必要ない)条件を完全に待ってテイクオフします。ここまで出来る人ならば時に長くショートフライト。時には風向と風速に速度を一致させて短い距離でショートフライト。距離もコントロールしてみましょう。時にはこんな練習があなた自身に眠っている鋭敏な感覚を呼び起こすかもしれませんよ。

パラグライダーのショートフライトで高度変化を予測する方法は?


 次のトレーニング方法は少し道具を使いますが、そんな大それた道具ではありません。最初に書いておくと、この方法は最近のLTFクラス1−2以上、あるいはそれに相当するようなグライダー以上だと非常に難しいです。ですがファストグライダー、あるいはその次ぐらいのグライダーだと効果も上がりますし、トレーニングが意図していることを感じやすいと思います。方法は簡単で、最初に一本飛びます。着陸した地点にカラーコーンを置きます。次はそれを目標に飛行します。最初のカラーコーンを超えなければ、そのまま。超えたときはもう一つ目のカラーコーンを置きます。この場合は二つ目標が出来ますが常に遠いところへ目標を置いて下さい。超えたときはコーンを新たに設置していくだけです。3つぐらいあると効果的ですが、遠くに飛ぶことがこのトレーニングの狙いではありません。よく言われるパラグライダーの飛行角度とその目線の変化を学ぶことがトレーニングの狙いです。コーンが遠ざかれば目線(パラグライダーの水平方向への視程)が変化します。このことがわかれば良いのです。ただの地面だと意識しづらいのですが、目標をおいてテイクオフを行うことで自然とパラグライダーの滑空方向に目線が向くようになります。また、その都度変化する目線にも気づくことになります。数人で行うときもこの方法は有効です。この場合は最初に飛んだ人を仮の目標値として設定し、遠くに飛ぶたびに更新していけば良いのです。目線、目線と頭でっかちにならずに自然に目線が遠くへ向くようになるはずです。さらにこのトレーニングの経験を積むと、結果として目標のカラーコーンを超えた超えなかったではなく、飛び出した瞬間に超えない超える、という自分の数秒先の未来位置を予測できるようになります。この数秒先というところが非常に重要なポイントです。みなさんも経験豊かなエキスパートたちが山そばギリギリで旋回を行い(その人たちにとってはあまりギリギリではありません)上昇気流に乗っていくのを目撃したことがあるはずです。このような人はパラグライダーの操作ももちろん巧みですが、やはり正確な自分の次の位置を予測することに長けているのです。位置の予測が正確であって初めて、いわゆる攻めのセンタリングが可能になるのです。地味で地道な練習が極意への近道であることは良くあります。センタリング(上昇気流を捕まえるための旋回)が苦手な人は、一度だまされたと思ってショートフライトのトレーニングで汗をかきましょう。上がらないストレス発散にも向いています。効果的なトレーニングなのですが、先に挙げたように条件があります。最近の良く飛ぶグライダーで行うと、飛ぶたびに高度の調整をしないと講習会場に収まりませんので効果が低くなります。

パラグライダーのショートフライトで操作を自動化しよう


 高高度飛行と異なり、繰り返し練習できることがパラグライダーのショートフライトの利点の一つです。パラグライダーの技術向上のためには位置予測が必要だということを繰り返しています。このことを別の視点から考察すると、操作のための時間的なズレはいつまでもズレ続けてしまうことになります。するとズレがズレを呼ぶ悪循環が起こりそうなことがおわかりだと思います。。パラグライダーは時間経過とともに位置が変化します。経験豊富なエキスパートはこの変化を予測して操作を行います。つまり、予測とそれに伴う操作にズレが生じないと言うことになります。もちろん、操作の根幹である予測はあくまでも予測であってその修正と調整が必要です。ここでいうズレは、判断や予測にともなう操作に時間がかかる人はそのかかった時間に比例して自分の操作がズレ続けて行くことを意味しています。わかりにくいので実際のフライト例で示してみます。パラグライダーのソアリング(上昇気流を利用したフライト)で良く指摘されることが旋回中に風下に流されるということだと思います。いうまでもなく、流される割合が大きい人の方が上昇気流を見失いやすく結果として高度を獲得できないことになります。これは、旋回の操作が悪いと言うことではないのです。むしろ予測が遅れていること、そして予測の遅れに反応がさらに遅れていること、反応が遅れていくために予測と自分の行った行動にズレが生じること。この悪い循環に陥っているといえます。あまりにこのズレが大きくなると、新たな全く別の予測に基づいて別のフライト計画を立てざるを得なくなります。パラグライダーが時間経過という一つのタイムラインにあるとすれば、これをもとに戻すことは難しいのです。なるべく速い予測と判断が必要です。そしてそれらに基づく操作は反射的なものでなければなりません。ソアリングに限らずランディングアプローチでの致命的な失敗もここに理由があります。着陸場にぎりぎりで到達する、あるいは指定地点を大きく超えてしまうような正確さが不足しているランディングアプローチになってしまう人はやはりパラグライダーの操作に問題があるのではありません。現在の自分から数秒先の自分を予測し、判断し、操作を行うという一連の流れが時間的にズレていることが原因なのではないでしょうか。このズレは上手な人ほど小さな誤差(おそらくゼロになることはなくても)にとどめることが出来ます。高高度飛行は高度に余裕があるために、考えて行うことができます。風に流されても高度が下がっているという結果があるだけです。ショートフライトはすべてが短い時間サイクルで行われます。考えて修正していては目標通りに飛行できないことがほとんどで、しかもそのフライトに及ぶリスクは小さく得られる練習の効果は高いのです。先の項目で触れたような練習を通して、それが練習と意識しないような経験を得られてる頃には、考えて操作するのでなくて身体的反射で操作出来るようになっているはずです。これこそがショートフライトを行う理由なのです。

パラグライダーの高高度飛行における実践


 ここまでは、ショートフライトにおける実践方法とその目的を中心に記述してきました。高高度飛行はいくつかのミスはそれが致命的なミスでないかぎり、許容されます。飛行ルートが多少ずれてもランディングに支障を来すわけではありません。自分の旋回の方向がずれていても上昇気流からは外れてしまうでしょうが、そのことが即座にパラグライダーのフライトを危険に陥れるわけでもありません。しかし、目的が明確なフライト状況ではその限りではありません。実例で取り上げているようなソアリング、またはランディングアプローチの最終局面などでは、ミスを犯せば犯したミスの程度によって必ずその結果となって現れてきます。
 パラグライダーにおける高高度飛行では、その目的が曖昧模糊になりがちですので、まずはここから変化させていきましょう。まっすぐ飛ぶなら飛ぶ。あげるつもりならあげる。なんとなくサーマルありそう、なんておいしい話はそうそう転がっているものでありません。そしてフライト中の思考方法を次のように切り替えます。
 現在のパラグライダーではなく数秒先のパラグライダーの飛行経路を考える。
このことをくせにすることで随分と変わるはずです。サーマルソアリングを考えてみましょう。同じようにセンタリングを始めた人でもその動機は様々なはずです。ある人はバリオメーターがなったからとりあえず始めたのかもしれません。ある人はその前から上昇を感じていて、バリオメーターがなるであろうことを予測していたかもしれません。あるひとは偏流角を計算に入れバリオメーターがなっているにもかかわらず直線を維持していたかもしれません。ある人は旋回を始める時点で終了方向を考え次にパラグライダーがどこへ向かえば良いのかが想像できているのかもしれません。その場面に遭遇した人のそれぞれの予測力によって行動に差が生まれるでしょうし、結果も違ったものになっていくことでしょう。ショートフライトは技術の基礎を習得し、ある程度の定型をつくるのには適していますが、実際には先のように予測の根拠なるべき材料は多岐にわたります。つまりその身につけた技術の応用実践を行わないと正確な予測と判断力の育成にはつながらないものなのです。また起こした行動による結果に対処し続けるという意味においても高高度飛行での実践を伴わなければ、技術のための技術練習に終わってしまいます。やはり、練習は実践を伴ってこそ意味があります。メリハリをつけ、練習と実践を分けて高高度飛行に挑戦しましょう。
 前回から今回にかけて直線飛行から位置の予測ということをテーマにしています。特に今回は位置の予測を数秒先の未来というキーフレーズに置き換え、その予測に対する操作の時間差をなくしていくためのショートフライトトレーニングの方法などを紹介しました。また、この記事のそもそもの目的は「うまくいかない」そんな漠然としたことに対してヒントやきっかけになれるつもりで記述をしています。自分の位置の予測、数秒先の自分、自動的で反射的な操作、などいくつか重要なキーワードもやっと記述する段階に入ってきました。これからピッチコントロールや旋回、ランディングアプローチなどいろいろなテーマを取り上げていきますが、先に挙げた言葉は自分のパラグライダーにとって非常に重要な言葉です。特にフライトについて記述するときは避けて通れないと感じています。ライズアップから直線飛行まで来まして、ようやく自分の伝えたいことの一つを伝えられたように感じています。次回はフライトから離れまして「ブレークコード」を取り上げようと思っています。それは今後旋回やランディングアプローチなどについて話を進めるときにブレークコードの操作感覚などに触れないわけにはいかないからです。それでは、今回もご一読ありがとうございました。

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 8回目になりました。ここまで、パラグライダーのライズアップからテイクオフを取り上げてきました。そして準備の重要性であったり、練習によって感覚を磨くことの大切さについて記述してきました。
飛び立つまでに随分時間がかかりましたが、この傾向はこれからもかわらないと思います。気長におつきあい下さい。
 今日からは空中でのお話に入ります。パラグライダーは空中を飛行する乗り物?(道具)ですから、たくさんの話題がありますね。これからも、何気ないテーマを必要以上に深く掘り下げる姿勢を忘れずに続けていきます。その理由は、この連載記事の目的が、パラグライダーのフライト技術や理論を掘り下げることで、上達のためのヒントや気づきを見つけようとしているからです。繰り返すことになりますが、基本となるのはあくまでも教本です。この連載記事は、読んだ人がよりパラグライダーに深い興味をもってもらったり、上達のきっかけを作り出せるような内容を目指しています。今回からは空中を取り上げるのですが、前述の理由で見落としがちなことを細かく見つけて行きたいと思います。

パラグライダーの直線飛行はすべての基本


 「そんなことは、知っている」経験豊富なベテランパイロットは皆一様に同じ感想を持たれることと思います。承知はしているのですが、つまらないと思わずにしばらくおつきあい頂ければと思います。
 みなさんは、パラグライダーの飛行中にどんなことを考えて飛行しているのでしょうか?ソアリングが目的ならばサーマルの場所や風の強さなどいくつもの要素を複雑に組み合わせることでしょう。みなさんは、さまざまな選択肢の中から最善と思われる方法を導き出していることと思います。
 これは、経験豊かなパイロットだからこそできることです。パラグライダーで初めて飛行したフライヤーにできる技術ではありません。緊張どころでそれどころではない。それも一理あります。しかしながら心理面に言及するのはこの記事の本意ではありません。そこで考えるべき事柄とそれに関するフライト上の結果を関連させて考察したいと思います。
 パラグライダーの直線飛行で最も重要なことは、あくまでも目標とする飛行地点に向かって直線を維持しながら飛行することです。もちろん、空中は風が吹いていて、この影響を受けますから何もしないで目標とする方向に飛行できるわけではありません。まして、目標する方向に向かって飛べているのかどうかが判断できない技術レベルでは、直線飛行そのものさえ明確に想像することが出来ないでしょうから、やはりパラグライダーの直線飛行は難しい技術なのです。
 考えるべきことはまだあります。パラグライダーは時間経過とともに高度が変化します。上昇気流が存在する場合を除いては確実に高度を失いながらの飛行となります。そのために、最終的な目標地点である着陸場との関連を無視するわけにはいかなくなります。そのため、目標となる方向を切り替えるべきタイミングがあります。この高度の変化も直線飛行を難しいものにしてしまいます。
 整理が必要ですので、実際のパラグライダーの練習飛行に置き換えましょう。
まずは、目標地点への飛行です。パラグライダーは風の影響を受けて飛行方向が変わります。そこで、目標地点への飛行を確実に行うためには、次の感覚と操作が必要になります。まず自分(パラグライダー)が風によってどのぐらい影響を受けているか、その影響を確実に捉えること。次に目標へ向かうべき適切な方向へパラグライダーの向きを適応させていくことです。この操作量の調整、目標方向への適応を円滑に行うためには、何よりも適切な視線と方向認識が必要になります。ここが重要です。パラグライダーの直線飛行およびそれを行うための修正飛行(偏流飛行)は、風の流れを捉える感覚と自分の流され具合を感知する空間認識を必要とします。パラグライダーの初期の練習では、自己の動作の習熟訓練が中心であるために、自分の飛行経路が風による影響を確実に受けていることへの対応は難しいものです。なによりも空間における自分の位置の認識力が不足しています。そのために、テイクオフ直後からパラグライダーが明確な目的方向へ向かないまま飛行(風に流される、あるいはテイクオフした飛行方向のまま)を続ける人を多く見受けます。これでは、ソアリングを目指すことはもちろんできません。そればかりか、風速の影響が顕著になるとパラグライダーの飛行そのものすらおぼつかない状況になってしまいます。

パラグライダーの方向を定めるために必要な感覚


 パラグライダーの直線飛行には、風による影響(流され具合)を感知する感覚とそれに対応する方向修正を適切に行うための空間の認識が必要であることに触れました。
 パラグライダーのフライトは方向をコントロールすることに対して外的な要因を受け続けます。意識した訓練を行わない限り、私たちがこのような日常生活とはかけ離れた感覚を習得するのは難しいものです。日常での生活を想像して下さい。歩くにせよ、走るにせよ、車で移動するにせよ、目的地を見失わない限りはそこにたどり着くことは誰にでも出来ることです。これは目的に向かう歩行や走ると行った運動に対して自分の運動を妨げる外的な要因がほとんど存在しないからです。これが、海の上ならばどうでしょうか。方向は常に海流や波の影響を受け続けます。空を飛行するパラグライダーに置き換えれば、風の状態という外的条件がつねに私たちの方向への操作に対して影響を与えます。このような経験は日常生活ではほとんど経験できません。
 付け加えるならば、人にとっての目標方向への認識は意外に難しいものだと言うことです。実例を挙げてみます。運動部に所属した人ならば誰でもグラウンドに白線を引いた経験がおありでしょう。これが経験を積まないと意外に難しいことをご存じだと思います。白線に気をとられていると白線がどんどん曲がって、とてもサッカーや野球のグラウンドとしては使えないようないびつなものになってしまいます。上手に白線を引くためには、目標となるポイントに目標物を定めて(私の経験では人に立ってもらったり、サッカーのコーナーフラッグを使ったりしていました。)そこへ向かってまっすぐ歩くように意識します。このとき、白線はほとんど見ません。このやり方を会得するとまっすぐに白線を引くことが出来て、部活の先輩に怒られることもなくなります。このように直線をイメージすることは、なかなか難しいものです。パラグライダーの飛行ではこの困難さに加えて、風という外的な要因をつねに受け続けますから、難しさはグラウンドの白線引きよりも上なのです。目隠しをしてまっすぐ歩ける人がいないように、直線方向を目標とする対象なしに移動できる人はほとんどいないでしょう。これは人の空間認識が視覚情報に依存しているからだと思います。このポイントを意識することで、パラグライダーの直線飛行の精度を極めて高いものに変えていくことが出来ると思います。

パラグライダーの高度変化を感じ取る直線飛行を目指す。


 パラグライダーのソアリング(上昇気流を使用したフライト)が上手な人は高度の獲得が優れているだけなく、高度の損失を最小限度にコントロールできているものです。あるいは、移動による高度の損失と上昇気流によって獲得できる高度の足し算、引き算が上手なんだと言うことです。サーマルソアリングについて触れることは本記述の目的ではありませんのでここでは触れません。とりあげるのは、高度の損失の予想です。目標とすべきサーマルの場所への移動は直線飛行で行います。どの高度でスタートして、その高度で到達できるのか。この予想値が正確であるからこそ、一つのサーマルにかかわらず、次々とサーマル(上昇気流)を乗り継いで長い時間フライトすることが可能なのです。私たちが生活しているのはほとんどが平面です。常に高度が変化するような空間で生活をすることはほとんどありません。上昇と下降も、それが加速度を伴って急激なものでない限りは、身体に備わった感覚のみで認識することはほとんど不可能です。パラグライダーがいかに日常とは異なるものか。それは、方向への外的要因(風)と時間推移による高度の恒常的な変化(風、通常のパラグライダーの沈下速度)の二つが組み合わさっているからです。上級者を志すパラグライダーのフライヤーならば是非この非日常的な感覚を身につけたいものです。

パラグライダーの直線飛行を習得する効果的な方法


 パラグライダーの直線飛行を最初に取り上げたのは、この自分の状態が常に変化をし続けることを最初に理解して欲しかったからに他なりません。変化するものが方向と位置(高度と場所)、それらに風などの外的要因が組み合わさると、自分の次の位置が際限なく変化します。そして、パラグライダーの直線飛行は非日常的であるためにいままでの経験を基に行えない難しさがあることがおわかりいただけたのではないでしょうか。いたずらに飛行を続けていてもこの複合的な感覚を身につけることが難しいものです。そこで、オススメな練習方法は思い切って高高度飛行を捨てて、ショートフライト(講習会場でのフライト)を数回行うことです。
 グランボレでは斜面の中段からのフライトが非常に効果的です。その場合はターゲットの中央を意識してフライトをすることが重要です。これは方向の意識付けのために行います。この意識付けがなされていない段階では、たった数十メートルの距離でさえ目標への飛行を完全に行うことが出来ないことに気づくと思います。意識付けがなされてきた段階では、方向への修正を素早く判断するために、出来るだけ早く、そして小さく、方向を修正できるような意識をもってフライトを行います。そのフライトでも流され方とその修正に対して反射のように反応できるように意識をもって練習して下さい。また繰り返し練習を行うなかで、自分が地面のどこに着陸するかの予想を行います。その地点を越えるか越えないか。そのときに受けている風の状態や離陸の精度によって異なるにせよ、パラグライダーの高度がどの様に変化するのかを感覚的に身につけるためには非常に効果的な練習方法です。時間的な推移で高度が変わることを繰り返し経験することで、パラグライダーの高高度飛行の質も向上すると思います。また、パラグライダーの直線飛行に影響する外的な要因が優しい条件で行った方が効果的です。つまり、なるべく風が弱いときの方が効果的な練習が行えます。もちろん、慣れてきたら少しずつ難し条件で練習すると良いでしょう。グランボレのスクーリングでは高高度飛行のトレーニングが中心となっています。そこで、空き時間などに意識してこのショートフライトを行うようにすると、メキメキ上達すると思います。

パラグライダーの直線飛行を俯瞰できるようなイメージで


 繰り返し練習し、ある程度の目標への飛行経路が維持できるような技術レベルが確立してきたら、次の目標は自分の飛行経路を俯瞰できるようなイメージを持てるように訓練することをオススメします。
 パラグライダーのフライトにおける上級者のイメージは時に、時間を飛び越えて予想を立てたり、遙か遠い人の飛行状態から自分の飛行状態を確かめたりするもので、いままさに自分がしていることに集中しきっている心理の状態はきわめて稀です。さらに、これから変化するであろう気象条件や移動した先での地形による風の影響度を想定するなど、本当に頭が休みなく動き続けます。これらのトレーニングのために、自分がいま飛んでいる状態を上から眺めるとどのような状態なのか推測してみましょう。千変万化する条件を自分のフライトコンピューター(頭脳)に次々とインプットしていけるように自分のフライトを客観視できるような訓練を始めましょう。このトレーニングは次の方法を根拠にしています。私たち、インストラクターはフライトを説明するときにランディングの模型や三峰山の小さな模型などで説明をします。これはパラグライダーの飛行経路や高さの変化、やがてはランディングアプローチの手順などをわかりやすく伝えるために工夫しているのです。この方法と同じように自分の頭の中に三峰山のモデルを置いたり、小さなランディングを想定してそのイメージの中でパラグライダーを実際にランディングさせるイメージを持ったりします。すると、不思議に自分のフライトコンピューター(頭脳)に入力できなかったような情報が次々に入って行くようになります。これは意識の転換というべきもので経験が必要です。しかし非常に有効な方法です。直線飛行が苦手な人は是非試してもらいたいなと思います。
 今回はパラグライダーの直線飛行を取り上げて、人の日常感覚とのずれ、その観点から何が難しく、どのように練習すれば良いかを考えてきました。「直線飛行なんて」たしかに一理あります。パラグライダーは基本的にまっすぐ飛びます。しかし、そのように考えている人ならば、次のようなことを想像してみて欲しいと思います。きちんとした直線飛行を行えないまま旋回練習を始めれば、やはり旋回そのものもいい加減なものになります。高度の変化と到達地点を予測できない人は、飛行を繰り替えしたとしても、ランディングアプローチにおける最終進入高度の予測を正確には行えません。風の流れと自分の意図する進行方向への流れの差異を体感できない人は、サーマルセンタリングにおいて効果的な旋回の修正を行うことが出来ません。直線飛行になんらかの問題があれば、上手に曲がることも出来ません、ランディングに不安要素が常にあります、サーマルから外れて高度が獲得できません、そのような悩みを抱えることにつながるのではないでしょうか。パラグライダーの飛行様態における様々な悩みや疑問を解決する一つの方法が直線飛行にこだわってみることなのです。
 いわば今回は伏線のような内容で、結論として言いたかったことがパラグライダーの非日常的な感覚についてでした。次回は具体的な操作まで踏み込みながらパラグライダーの飛行を考えてみたいと思います。読みづらいテーマだとは思いますが、今回もご一読ありがとうございました。

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 7回目にしてまだ空中へ飛び立たないのか?そんな声もちらちら聞こえて来ました。しかも、前回はすこし寄り道をしてしまいました。そこで、今回は本来のテーマに戻り、いよいよ空中へと飛び立ちましょう!
 ここまではパラグライダーという翼を正確に機能させるためのライズアップ。また、そのための技術的な考察や感覚について触れてきました。それは、私たちが身体的にも感覚的にも飛行する能力を先天的には有していないからです。以前も書きましたが、私たちは猫のように高いところから落ちても怪我をしないような運動能力はありません。ハヤブサのように時速100キロ近い速度で移動している傍ら捕食対象となる小動物に向かって方向転換できるような動体視力も3次元のバランス感覚も持ち合わせてはいません。飛行する能力は後天的な訓練と経験によって獲得するしかありません。なおかつその能力は、人が飛ぶことを前提に、人が作成した装備を用いて、その使用方法を習得することで獲得するものです。パラグライダーのフライトに経験が必要な最大の理由だと思います。

パラグライダーの離陸動作における走るという動作


 完全に機能しているパラグライダーとは、どのような感覚を人にもたらすのでしょうか?いいかえると、どのような感覚を捉えた場合に、離陸へ向けた最初の動きをはじめていくのでしょうか。パラグライダーの空力的な要件と照らし合わせながら考えましょう。
 パラグライダーはそのプロファイル(形状の特徴)から揚力(人を浮かそうとする力)が斜め前方へ発生します。この揚力と人間にかかる重力が合力を形成して前進力をつくります。このとき、パラグライダーは人をつり上げようとします。感覚に鋭敏な人は足の裏にかかる体重がパラグライダーの揚力によって上方向に均衡し、かかとが持ち上がりそうになる力を感知できます。この感覚は、テイクオフの傾斜で感じると、より明確に体が前方へと運ばれるような感覚として捉えることが出来るようになります。つまり、パラグライダーの翼としての機能、言い換えればライズアップが完全な状態で頭上安定を迎えている場合は、パラグライダーとの良好なバランスによって、あくまでも自然な走る動作でテイクオフをすることができるようになります。このような感覚があるときは、頭上のパラグライダーの操作に集中できます。パラグライダーの操作は人間の走る速度と調和させるために、ブレークコードの操作によって速度を調整します。このような操作が行えているときは、パラグライダーのピッチ(縦方向への動き)が安定し、離陸直後もほとんど揺れることなく、安定した滑空へと移行します。このようなパラグライダーと人の関係はパラグライダーが主体で、人はそれを制御して追従するという関係で成り立ちます。
 走ることをしないのではなく、あくまでもパラグライダーの前方への動きを感覚的に捉えて走る(むしろついて行く)と言うことです。前々回のパラグライダーライズアップの練習方法で触れたことを思い出して下さい。意図的にパラグライダーの速度を変化させて走るという練習方法を紹介しました。ブレークコードによって速度を調整し、前方へ移動するグライダーの速度と調和して走れるようになりましょう。パラグライダーのテイクオフが簡単に思えてくること間違いありません。

パラグライダーのテイクオフ動作のうち荷重と加速の意味


 走るという動作に付随して、パラグライダーのテイクオフ動作を説明するときに良く使用される言葉が、荷重そして加速です。荷重という言葉は、先日実施したパラグライダーのライズアップセミナーでも参加者の方から頻繁に聞かれました。同様に加速という言葉もよく聞かれました。使われ方はこんな感じです。「パラグライダーに荷重をかけて、加速して、十分な揚力を得てテイクオフする」
 言葉の使い方も、正解です。空力的な理論の展開にも適っています。問題なのは、これらの言葉をどのような状況でも鵜呑みにすることだと思うのですが、みなさんはどのように思いますか?
 荷重とはパラグライダーの揚力方向に対して、本来の重力がかかるべき方向へ体重を移し、グライダーをより前方へ移動させる、もしくは移動しやすくするために行う動作のことを指しています。つまりは、揚力と重力によって合成される前進力を得る手段だといえます。具体的な運動状態は、足首と、膝関節と、股関節が、ほどよく屈折して、バランスのとれた前傾姿勢を作ります。なおかつ体重を自分の筋力で支えない、その状態になれば自然と自分の体重がパラグライダーにかかることになります。必要以上に前傾するのは、荷重を意識するとはいえ正しい方法ではありません。いたずらに視界を狭めてしまいます。パラグライダーが正しい位置にあり、荷重を行う身体的運動が正確であればあるほど、より効率的に前進する力を得られます。つまりパラグライダーは自然と加速を始めます。このような動作が出来ている人はむしろ、走ると言うよりも滑らかに動いている、そう表現した方が良いかもしれません。
 加速という言葉はより注意が必要です。パラグライダーのテイクオフに必要なのは十分な揚力を得ることです。人間だけが闇雲に加速することではありません。パラグライダーという空気の流れによって揚力を生み出すその形状に、的確に空気の流速を与えることにあります。一時的に人が加速しても、そこにパラグライダーが着いてこなければパラグライダーのピッチが後方へと移動してしまいます。このような状態で離陸という結果を迎えると、パラグライダーは適切は飛行方向へと回復する動き(ピッチング)と人間の重力が適切な方向に一気にかかることによって速度を獲得する動き、二つの動きが重なることになります。結果としてパラグライダーは大きく前方へ移動し(これもピッチング)、テイクオフ直後の風の安定度によっては、パラグライダーがつぶれたりします。これと類似した動きはパラグライダーが頭上安定しないまま(後方へ位置したまま)走り出す人には良く見られる光景です。経験が豊かなパイロットはその動きをブレークコードの動きによって相殺できますが、風が不安定だと許容範囲を超えて、翼のつぶれを誘発していまいます。

パラグライダーのテイクオフ直前、わずか数秒の感覚の重要性


 先に触れたとおり、加速する意識が強すぎたり、何よりテイクオフの時にとにかく慌ててしまう人は瞬間的に走り、飛び出してしまうために、テイクオフ直後のパラグライダーが不安定です。パラグライダーが良く揺れます。ピッチ方向(前後)だけではなくロール方向(横)にも良く揺れます。これは、離陸直後のパラグライダーが正常な飛行状態に戻ろうとする揺れであることが多く、ブレークコードによる操作に大きな制約が付けられてしまいます。
 この揺れる動きの解説は、空力的にかなり難しい説明を付け加えなければなりません。それは飛行角度、パラグライダーの角度、迎角、という言葉を使用して説明します。ここでは深入りしませんが、避けて通れないテーマですのでいずれ取り上げることにします。ここでは、気流によって揺れることとは違うという理解をしてください。
 完全な空気の流速を得ることができずに、また完全な飛行角度を得られないまま離陸してしまったパラグライダーは空力的なバランスが完全に釣り合って飛行しているわけではありません。つまり、ブレークコードによる操作量、操作感、タイミングとも、通常に飛行しているパラグライダーに比べると狭い範囲に限定されるということになります。この狭くなる範囲は、性能の高いパラグライダーほど狭くなります。この状況を現実的な状況説明で補完してみましょう。ある人がパラグライダーでテイクオフしようとしています。この人はパラグライダーがやや後ろにあるのに強引に走ってしまいました。結果パラグライダーはなんとかテイクオフすることは出来ましたが、直後におおきく揺れています。前方向へのピッチングを止めようとしたものの、片側の翼がつぶれてしまいました。こういう状況ですね。このあとのブレーク操作に間違いがあれば状況はさらに悪化します。地面に対する高度の余裕があれば、パラグライダーは回復して飛行できる状況になりますが、高度がなければツリーラン覚悟する状況です。
 パラグライダーの頭上安定から地面に足がある数秒の間。ここを完全に制御下においてこそ、本当のパラグライダーのエキスパート!ほんの数秒の動きにパラグライダーを感知するもっとも重要な局面を迎えます。自分から飛び出してしまうのではなく、パラグライダーに連れて行ってもらえるような走り方。ほんの数秒足らずでもパラグライダーのピッチを十分にコントロールし、正確な方向で離陸すること。揚力が増えていく(自分を浮かそうとする感覚は)ことは、この段階でますます前進力に合成されて自分を前方へと移動させようとします。この力の変化を正確にとらえられれば、自然な走りでそのまま空中へと飛び立てていけます。

パラグライダーのテイクオフ、離陸直後


 どのようなエキスパートであれ、毎回毎回すべてのテイクオフを完全な動作とタイミングで実現できるわけではありません。したがって、どの人にも共通して離陸直後のパラグライダーは完全なバランスを得るまでは一様に不安定なのだといえると思います。パラグライダーのアクシデントの大半がこの離陸直後であることも、もはや常識と言って良いでしょう。
 離陸直後のパラグライダーの操作には細心の注意が必要です。パラグライダーの操作には揺れを正確に感知しなければ出来ない操作が多くあります。テイクオフ直後という最も繊細な操作が必要とされる時間的な流れの間、必要のない動きをして、必要のない揺れを作ることは絶対に避けなければまりません。もし、テイクオフ直後にパラグライダーが大きく揺れているとして、それはテイクオフ時の不完全な状態に起因するのか、あるいはテイクオフ直後に風が不安定なことに起因するのか、それによってブレークコードの操作が様々に分岐します。ですから、揺れるのはせめてこの二つの要因に絞るべきです。
 実はここまでの記述はたった一言を伝えたいがための前置きです。パラグライダーは揺れます。操作はその要因と伝わる感覚で決まってきます。待って止める?すぐに引く?すぐに引いてからゆっくり戻す。いろいろです。あくまでパラグライダーから伝わる情報に対して正確に反応していくことに終始すべき時間帯です。余計な操作は一切すべきではありません。伝えたい一言は「座ってはいけない」ただそれだけです。スタンディングポジションからハーネスに完全に座ったシッティングポジションへ移行できるには、ブレークコードの操作を必要としない状態、パラグライダーが揺れることなく安定した飛行に移ってから行います。このことは皆さんも知識としてすでにご存じだと思います。その本当の理由とは、こんなところにあるのではないでしょうか。つまり、離陸直後の揺れはブレーク操作が非常に難しいというところに。

パラグライダーのテイクオフ、最後の選択肢


 たとえどんなに完全なテイクオフを目指したとしても間違いは起こります。そこで、失敗したら自分がどうなるか、先の未来図を少し想像し、その逃げ道を確保しておくべきです。テイクオフの状態はいつでも違います。風の状態、斜度、広さ、離陸直後の斜面の状態など。逃げ道を確保するのは、裏を返せばテイクオフの自分の状況をシミュレートすることです。これによって、最終的な飛行決心の範囲が決まって自分自身に枷をかけることができるようになります。困難が予想される場合は早めに取りやめなければならないでしょう。場合によっては余計な修正も避けたいところですから、頭上安定まで待たずに取りやめた方が良い場合もあります。自己制御という難しいテーマを比較的容易に理性の制御下におけるようになるには、このようなネガティブシンキングも時に有効です。テイクオフはギャンブルではありえません。あくまでも冷静な判断の下で空中へ出て行くべきです。
 想像してみて下さい。だれでも狭いテイクオフ、強すぎたり、弱すぎる風はいやなものです。ですが不思議とこのような状況ではパラグライダーが深刻なアクシデントを起こさないものです。おそらく常よりも集中力が高く保たれていること、事前のシミュレーションがなされ停止するとか、取りやめるとか、そのような判断が速く下せる状態にあること。このような要因が難しい条件でのテイクオフにおいてのアクシデント発生確率を小さくしているのだと思います。何でもない条件の時ほどアクシデントが起こる。これはパラグライダーにおいては鉄則と言うべき真実です。
 このテイクオフ。この風速。この風向。それなら、だいたいこうやって出る。ここで上がってくる感覚ないなら取りやめ。頭上で確認する。走る。その間になにかあればこの藪に引っかかる。そのときはこちらの方が痛くなさそう。いや、こちらは漆の木があるからこっちへひっかかろう。当然頭の中にはうまくいくイメージもシミュレーションします。大切なことは事前に考えて準備をすることで、精神状態をあくまでも平静な状態に保ち、万が一の時も慌てないようにすることです。
 パラグライダーが僕たちの世界を広げてくれる道具だとしても、それは確実に空へと飛び立ててからの世界のハズです。ここまで6回の連載をかけてようやく空中へと飛び立ちました。拡がった世界。それは人に優しいばかりではありません。そしてパラグライダーのフライヤーは完全に着陸する義務を持っているハズです。次回のパラグライダーQ&Aはいよいよ空中編に入ります。それでは、また次回。今回もご一読ありがとうございました。

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 パラグライダーQ&Aも6回目の連載になりました。今回は、パラグライダーが頭上安定後に速度を得て離陸する、その技術についてお届けするつもりでした。結論から先に言えば、今回は別のテーマを取り上げるつもりです。ちょっとした寄り道だと思って、おつきあい頂ければ幸いです。別のテーマを取り上げることになったのは、ある方から質問を頂戴したからです。パラグライダーを習い始めて、飛べるようになるといろいろなことを不思議に思うこともあるかと思います。それが、直接にパラグライダーに関係なさそうでも、掘り下げていくと意外に重要なテーマになることもあります。パラグライダーの技術の細部にこだわる、これが本連載のテキスト記述に対する姿勢です。それでは、質問を紹介するとともに、本題に入りましょう。

パラグライダーのセルフレスキューについての疑問


 寄せられた質問は次のようなものでした。
「先日の連休は朝霧で飛んでました。ベテランフライヤーの数名の方が山岳用のハーネスをつけておられました。(パラグライダーのハーネスを装着することとは別に)確かに朝霧の杉の木はやたら高く、山も険しそうなので、セルフレスキューも必要なのかなと思いました。トレーニングも必要でしょうが、山岳ハーネスをつけるメリットってどんなものなのか必要性も含め、教えていただけないでしょうか? 」
 括弧は僕が付け足しましたが、不思議に思われたのも無理はないと思います。グランボレでは誰一人このような装備でフライトしている人はいません。セルフレスキューの必要性、その技術がどんなものか、またその装備は。いろいろなことを疑問に思われたのだと推測します。これらいろいろな疑問すべてにお答えできるように、今回の記事をお送りします。
 最初はパラグライダーのセルフレスキューの必要性についてを取り上げます。パラグライダーのフライトにおいては、山の斜面や山中に着陸せざるを得ない状況が間違いなくあります。また空中で飛行不能な状態に陥ったときには緊急用のレスキューパラシュートを使用しますが、この時もほぼ間違いなく山中に緊急着陸することになります。そこで、セルフレスキューの必要性については、これは絶対に必要な考え方であり、またその技術の習得は避けては通れないのです。ここでは、ハザードとリスクの違い、あるいはリスク評価については触れませんが(テーマがそれてしまいます)、パラグライダーでフライトする上で避けては通れないアクシデントに備え、その被害を最小限度にするための最も重要な考え方がセルフレスキューなのです。ところが、従来のパラグライダースクールでは、パラグライダーの飛行技術の講習は熱心に行うものの、このようなセルフレスキューに対する講習はあまり熱心に行われてきませんでした。これは非常に残念なことですし、インストラクターは態度を変えなければいけません。そこで、数年前から、パラグライダーのセルフレスキューに対する技術の体系化とその指導方法の確立を目指して活動が行われてきました。まだまだ定着はしていませんが、徐々に根付かせて行きたいと考えています。

パラグライダーのセルフレスキューの現実的な評価


 パラグライダーのセルフレスキューについて最も重要なことは、事前に結果を想定しておくことです。そして、その想定される結果についての準備をすることです。これが最も重要です。自己脱出の訓練も重要ですが、起こりうる事態を詳細に想定しておくことが重要です。よく勘違いされるのはロープと下降器を使用して、これが出来ると、どのような状況でも自分はこの技術で脱出できると思い込んでしまうことです。にわか仕込みの懸垂下降の知識をすべてだと過信し、なんでもかんでも自己脱出に結びつけてしまうことはいたずらに事態を悪化させるだけです。その前に考え、また知らなければならないことがあります。飛行空域が正しいか。ハーネスのセッティング状態が良好かどうか(ハーネスのセッティングが悪いと、非常につらい姿勢で木にひっかかることがしばしばあります)。緊急時に連絡を確保できる手段が確実か。自分の状態や現在地など緊急時に正確な情報を伝達できるのか。事態を悪化させずに、現状を回復出来る装備があるのか。その使い方を習得しているのか。セルフレスキューというと、素早く現状から脱出するということが、想起されやすいですが、このように順を追って考えてみると、日頃の装備やフライトに関する基本的な準備が重要なことが分かります。自己脱出できたところで山の中をさまよい歩くことしか出来なければ、事態の改善になんら寄与しません。かえって救助チームを混乱させてしまい、救助チームに著しく負荷を掛けてしまいます。
 当たり前すぎて見過ごしてしまいそうなところに、事態を悪化させてしまう要因が必ずあります。救助チームと連絡を取り合っていたら、トランシーバーの電池が切れた!そんなケースは珍しくありません。どうか日頃の準備の大切さ、日常の繰り返しの中にセルフレスキューの考え方の基本があることを忘れないでほしいものです。このことを象徴するのは次のようなケースです。あるフライヤーが山の中に不時着することになりました。その人からは携帯電話で、その状態を伝えてきています。怪我が無いことや木の高さ、救助の要請などが伝えられてきています。しかしながら、救助チームは現在地を特定できません。救助チームは言います。「GPSはないの?」「GPSはあります!」「じゃあ簡単じゃない、すぐに救助に行くよ!現在地の座標を教えて!!」「・・・・座標の見方がわかりません」「・・・・」
 これは、笑い話では無くて、実際に何度も僕たち救助側の人間が経験していることです。これで笑ってしまう人も、次のような質問が来たらどうでしょうか?答えられるでしょうか?
 「座標の形式は?」
 この事例で伝えたいことはGPSについてよく知っておくことではなくて、当たり前のようなところに、事態を改善する方向に向かわせるのか、より困難な方向に向かわせるのか、その分岐点が存在すると言うことです。日頃の準備がいかに重要かどうかを示す教訓だと思って下さい。パラグライダーの装備においては必需品といっていいでしょう、便利な装備であるGPSもただ持っているだけでは役に立ちません。そして、電池が切れたらおしまいです。

パラグライダーのセルフレスキューの技術


 そのように考えると自己脱出という技術はセルフレスキューという大きな考え方の一つの選択肢であることがおわかりいただけると思います。絶対にしなければならないことではなく、自己脱出の技術を身につけてトレーニングすることで、セルフレスキューの選択肢がひろがり、様々な可能性を考えられると言うことになります。セルフレスキューの実際とは、自分の状態を正しく把握し、また可能な限りその情報を正確に、豊富に伝えられること。そのなかで、現状をよりよい方向に変化させていくことです。そのためには、最低限度行うべきことがあります。パラグライダーの緊急着陸は木の上であることが良くあります。身体に直接の損傷がなくても、ある程度の高さがあれば落ちないための工夫が必要になります。それが自己確保と呼ばれる技術です。繰り返しますが落ちないための技術です。スリングを丈夫な木にタイオフし、その末端をロック付きのD型カラビナを用いて自分のハーネスのカラビナに固定します。これだけです。ですが、これが出来ない人が多くいます。なぜでしょうか?
 道具はあるのに出来ない人の大半はハーネスのセッティングがおかしいのです。肩ベルトが非常に緩かったり、寝そべっている(これらは通常のフライトにも悪影響を及ぼしますが)とハーネスから体が落ちそうになり、それどころではない状態になり必死になにかにしがみつくことになります。またパラグライダーのライン、パラグライダーのアクセルラインが自分の体と干渉すると、最悪は逆さづりになってしまいます。自己確保どころではない!そんな状態です。経験がない人は想像してもらうしかありませんが、逆さまになったハーネス、緩い肩ベルト、これが揃えば人間は簡単にハーネスから落っこちます。ここでも自己確保に必要なスリング、カラビナの前に当たり前のパラグライダーハーネスのセッティングが正しいかどうか?このことが重要であることに気づかれると思います。
 見落としがちなことを見落とさないように、これがセルフレスキューの基本です。

パラグライダーのセルフレスキューにおける自己脱出


 セルフレスキューの考え方に大分字数を費やしていまいましたが、本質問には続きがありますので、それについても、触れたいと思います。
 パラグライダーが緊急着陸、特に木の上に着陸した事例はよくあることから、専門的な用語でツリーランと呼ばれています。この木から、自分が脱出して現状を改善する方法のことを自己脱出と呼んでいます。自己脱出を行うにはいくつかの基本装備が必要です。状況に対応したスリングが数本。それに応じたカラビナ。必要な長さと強度を持つロープ。下降器(ディセンダー)です。これらの装備は無制限に脱出し、下降出来ることを保証するものではありません。ロープの長さが足りなければ下降出来ませんし、木が太く、スリングが足りなくなるケースもあります。状況を正確に捉えて自己脱出が可能かどうかを判断できるようにならなければなりません。基本的な脱出方法は次のようになります。この方法はパラグライダーのハーネスとそれにセットされているカラビナを使用します。
 ヽ亮造兵己確保をセットする。
 ▲好螢鵐阿蚤場をつくる。懸垂下降に必要な装備をセットするために足場をつくる。
 自己確保より高い位置に下降支点をつくる。
 げ執濟拇世縫蹇璽廚鬟札奪箸垢襦
 ゥ札奪箸靴織蹇璽廚縫妊センダーをセットする。
 再び足場を利用して登り、ディセンダーにテンションを確保して体重を移す。
 Г海両態でパラグライダーのライザーを外す。
 ┘薀ぅ供爾魍阿擦燭薛,妊札奪箸靴深己確保を外す。
 ディセンダーを使用して下降する。
 すべての作業で間違いが一つでもあると重大なエラーになります。カラビナのロックがされているのかどうか。ディセンダーが適切にセットされているのかどうか。一つでも間違いがあってはいけません。これらの行程を実際にトレーニングしてみると、作業のいくつかは知識だけはなく、基本的な体力(筋力)を必要とすることに気がつきます。たとえば足場に立つ。これも片足で自分の体重を持ち上げてしかも不安定な足場にたてなければ次の作業を行えません。パラグライダーのツリーランという足場が非常に不安定な状態では思うように体を動かすことが出来なくなります。また再び足場に立って、パラグライダーを外す作業もなかなか難易度が高いのです。一つにはその不安定な足場に立って作業する体力がつづかないこと。もう一つは足場に立てたとしても、うまくライザーのテンションが抜けずにパラグライダーをハーネスから外すことが出来ないことです。パラグライダーが木にひっかかり、さらに自分の体重がかかっています。足場に立って体重を緩めても、その上方向に移動した分、引っかかった枝が戻ってしまえば結局パラグライダーのテンションが緩まることはありません。
 そこで、はじめから懸垂下降のためのクライミングハーネスを着用するとします。もちろん、パラグライダーハーネスの下に直接着用します。すると、先のいくつかの作業が簡略化されるのです。まず、パラグライダーのハーネスをライザーから外す作業がいらなくなります。足場にたって作業するのは非常に難しいので、このメリットは大きいのです。
 ー己確保をセットする。(クライミングハーネスに直接で良い)
 ⊆己確保より高い支点を作り、ロープをセットする。
 ディセンダーとロープ、クライミングハーネスをセットする。
 ぅ蹇璽廚肇妊センダーに体重を移す。
 ゥ蓮璽優垢離丱奪ルを外す。
 Ε蓮璽優垢ら出る。
 Ъ己確保を外す
 ┣執澆垢襦
 このような順番になり、パラグライダーのハーネスをグライダーから外す作業を簡略化でき、その分そのほかの作業もシンプルになります。パラグライダーを外す作業がありませんから、パラグライダーハーネスで下降する方法に比べて、下降支点もそれほど高い位置に作らなくても良いことになります。また、懸垂下降用に作られていないパラグライダーのハーネスでは、そうしても懸垂下降のバランスを保持しにくいのですが(どうしても片側がつられて、反転してしまいディセンダーのコントロールがしにくい状態になる)、クライミングハーネスはもともとハーネスの中央にビレイループがあり、安定した下降姿勢をとれることもあります。ただし、物事にはメリットだけということはありません。かならずデメリットがあります。双方の方法を比較してみます。
 まずパラグライダーのハーネスで下降する方法は、パラグライダーが外すのが困難だという問題があります。だからクライミングハーネスを使うのだ。本当にそうでしょうか?仮に外せないとしても、致命的な問題になりにくいともいえます。パラグライダーのハーネスをライザーから外せなくても下降出来ないだけで、滑落することはないからです。つまりクライミングハーネスを使用して下降を試みるには、脱出する確実性と必要性がこれに勝る必要があります。もちろん、パラグライダーのハーネスで下降を行う場合もディセンダーのセット方法が間違えていれば簡単に滑落してしまいますが。クライミングハーネスの場合はパラグライダーを外す作業を省くために、すぐに下降に移れます。それだけに懸垂下降のセットを確実に行う必要が(ミスが許容されにくい)あります。
 次に、下降にさいして両方の方法とも失敗したと仮定しましょう。パラグライダーのハーネスのほとんどは衝撃を吸収する素材が使用されています。これは非常に大きなメリットです。懸垂下降に移って後は一つのミスも許されませんが、仮に滑落したとしてもこの衝撃吸収剤が致命的な状態になるのを防げる可能性があります(もちろん、すべての衝撃を防げるわけではありません)。反面、クライミングハーネスにはこれらの衝撃を吸収するような装備はありません。したがって懸垂下降のミスは重大な事故に必ず直結します。自己脱出を行うのは、どのような方法で行ったしても脱出をしない方法に比べてリスクが増します。だからこそ、方法の優越の問題ではなく、どのような方法を用いるかの判断力と日常の準備。そして定期的なトレーニングによりどの方法でも確実に実践できることが重要だと考えます。

パラグライダーにおけるセルフレスキューの考え方のまとめ


 パラグライダーは、人間が経験できる範囲を広げ、見たことのない景色や、感じたことのない空気といった未知の世界を知る喜びをもたらしてくれる素晴らしいスポーツです。その一方で行動の範囲が拡がれば、知らなければならない知識が増えることや注意を要する事象と遭遇しこれに対応しなければならないことは間違いないことなのです。そこで、今回は質問で寄せていただいたことをいいチャンスだと捉えて、寄り道をさせていただきました。我々は技術を磨いて上達することに気をとられてしまいます。それはそれで、素晴らしいと思います、意欲を持って向上しようとするのは素晴らしいことです。そうだからこそ、それに伴ってセルフレスキューの考え方と技術の習得を目指すことも必要だと思うのです。次回は予告通りにパラグライダーのライズアップ、頭上安定から離陸直後までを取り上げたいと思います。今回ご一読ありがとうございました。

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 連載も5回目になりました!この記事はあくまでもパラグライダー上達を目指している皆さんのヒントやきっかけになれるような記述を心がけています。この記事を読んでいればすべて大丈夫!パラグライダーに必要な知識はすべて身につけられた!そういうわけではありませんので、誤解しないで下さいね。パラグライダーの上達といっても、抽象的です。目指すところが違えばゴールも違います。またそのゴールに至るまでの過程を考えれば、決して一つではあり得ないと思うのです。
 そこで、テーマを取り上げたら細分化して取り上げるようにしています。そのため依然としてパラグライダーのライズアップについての記述が続いています。しばらくおつきあい下さいね。

パラグライダーの完全なライズアップの感覚を身につけよう


 今回は、パラグライダーのライズアップおよびそのときにどうしても起こりうる停止の判断と動作、そして傾きを修正して頭上に安定させる、そのための具体的な練習方法に入っていきます。一つ目の練習課題は至って簡単です。普通にライズアップの練習をしましょう。ただし条件がいくつかあります。条件の一つ目は緩い斜面で練習することです。なぜなのか?その前に条件だけ続けましょう。条件の二つ目はある程度風速があること。練習には目的があります。この練習の目的は完全に滑空する準備が整ったパラグライダーが人間に伝える感覚を学習して記憶することです。そのためには余分な運動動作を省き、感覚に集中する必要があります。ですから、風が弱いとその分走る動作が大きくなってしまい、感覚に集中できません。ある程度の風速でチャレンジして下さい。その感覚はパラグライダーが発生する揚力を出来るだけ忠実に再現する。また感覚を学習するために長くその状態を維持したい。過度に斜度があると、パラグライダーは簡単に浮いてしまいます。また斜度が緩すぎるとパラグライダーの翼に沿って流れる空気の流れはパラグライダー本来の相対気流を再現できません。ちょっと表現が難しくなっていまいました。つまり、パラグライダーの滑空費ぐらいの斜度で練習するとちょうどいいのです。この状態だとパラグライダーが通常滑空するのと同じような空気の流れを再現しやすいのです。そして浮きそうで浮かないこの状態こそが頭上安定と呼ばれるポジションだからです。この状態のパラグライダーは限りなく滑空に近い状態ですので、ブレークコードによるコントロールはかなり実際の感覚に近づきます。つまり、すべてのストロークを使用しても簡単には失速しません。簡単に失速してしまうならば、それは頭上安定に入っていないことが考えられます。この練習を行うことで頭上安定の正しい感覚、そしてこれ以前に停止させなければならない感覚、などが身につけられます。練習を行うときの注意点はあくまでもパラグライダーの感覚に意識を傾けることで、どちらかというと受け身の動作です。決して走りすぎてはいけません。

パラグライダーの傾きを積極的にコントロールする練習


 この練習はこれが出来たから、この次に進もう!そういう感じではありません。念のため。パラグライダーのライスアップが上手な人はパラグライダーから伝わる様々な情報を受け取ると、その情報を瞬時に必要な動作や操作に変換して実行します。そのためにも練習は画一的は方法で、均一の感覚だけを目指してやってはいけないと思うのです。パラグライダーの練習の最大のポイントは様々な体験をすることでその操作や動作の基になる経験を増やすことです。それがすぐに上達の結果につながらなくても、体感した経験が重要なのだと思います。そこで次に取り組んでみたいのは、傾きを自ら作り出してはそれを修正しながら元に戻す。そんな練習です。この練習にも目的があります。それは傾いたパラグライダーの感覚をつかむこと。そして同時にそのパラグライダーの傾きが戻ってくる感覚をつかむことです。前回の記事でも書いたことですが、傾きの修正をどのような動作で行うか知っている人は多いハズです。ところが実際のライズアップからテイクオフではパラグライダーの傾きに戸惑い、修正動作が遅れ、あわや!というテイクオフになってしまう人が結構いますね。これは、パラグライダーの傾きになれていないのではないでしょうか?そこで、パラグライダーの傾きになれるための練習をしてみましょう。これも条件があります。やはり斜面でパラグライダーの相対気流を再現すること。そしてこの練習は、なるべく風が弱い時を選んで行います。風が強いと簡単に浮かされてしまいます。それはパラグライダーの対気速度、揚力の発生、傾き、翼面積の変化、というキーワードで説明できるのですが、今回は省きます。浮いてしまうと効率のよい練習にならないですし、この練習は動くことが目的ですのでなるべく動けるような条件の時に練習した方が良いのです。練習に際してはパラグライダーが翼として動くことをイメージして、スラロームランニングに取り組むのがよいでしょう。目標となるパイロンを設置して、意識的にパラグライダーを旋回させるつもりで行うと効果があがります。どのような効果かというと、傾いたパラグライダーが傾こうとして傾く力よりも自立安定しようとして戻ってくる力が大きいということに気づけると思います。そして前回指摘した傾いたパラグライダーが旋回すると、速度が上がっていくことを体感できるハズです。この練習を繰り返すと、ライズアップの時に傾きを感知するのが早くなり結果的に傾きにくいライズアップの実践につながります。またカウンターブレークの操作のタイミング、傾き方向へのステップ、複雑な動作の組み合わせを習得するのに非常に効果があります。ぜひ挑戦してみましょう!

パラグライダーの動きと人間の動きを適応させる


 この練習方法はパラグライダーをライズアップさせたのち、加速と減速を繰り返せるかどうか試す、という方法です。動作としてはパラグライダーをライズアップする、次に少しずつ加速する、次は減速する、もう一度加速する。この動作をできるだけ繰り返します。動作のポイントは一度減速させて、再び加速することにあります。パラグライダーのライズアップが苦手な人の大半はパラグライダーがどこにあるのか分からないまま、かえってその動きを妨げてしまうような操作を行ってしまいがちです。傾きの修正動作の最中にパラグライダーを後方へ落としてしまう人などはこの傾向があります。パラグライダーの速度、ポジションを正しく捉えられないと正しい動作が行えません。この練習を行うと減速した後に人間が走り出そうとすると大きな抵抗がかかることに気づきます。無理矢理走ろうとすると、かえってパラグライダーが後方へ移動してしまい、その動作が原因でパラグライダーが失速してしまいます。この一連の動作はパラグライダーの進行方向と速度、人間の進行方向と速度の関係が迎角を変化させる要因であることを知る重要な練習につながります。ここでは空力に関する詳細な解説はまたも省きますが、パラグライダーのつぶれから失速を誘因させたり、ランディングアプローチ(特に東から北東の強い風で乱れがあるとき)の最中に不意にパラグライダーが失速したように地面へ下がっていく、こういった現象を回避することにもつながっていきます。是非チャレンジしましょう。

パラグライダーのグラウンドハンドリング


 今度は安定したある程度強い風のなかで、様々な動きを組み合わせて自由にパラグライダーを動かせるように練習していきましょう。あまり強い風だと飛ばされてしまうので注意が必要です!パラグライダーのグラウンドハンドリングがライズアップのトレーニングに効果的なのはいうまでもありません。そこでもっともっと掘り下げて挑戦してみましょう。たとえば、頭上安定を確保できたら、そのままブレークコードと人間の動作で斜面を登ってみる。こんな動きもリバースの向き、そしてフロントの向き双方で挑戦してみる。適切にブレークコードでパラグライダーを減速させて風速より遅くします。今度は失速にならないように微調整を繰り返します。このときパラグライダーは後方へ進みます。あくまで人間から見て後方です。人がこの速度に合わせて動くと、一定の速度でパラグライダーは斜面を登ります。さらに、パラグライダーに大きな傾きを作り出し、それなるべく早く回復させながら反対側へと傾けていく。まるで空中でローリングを行うようにパラグライダーを連続して動かしてみましょう。自分から走るよりも走らされているような感覚です。この動きをできるだけ続けられるようになったら、操作の限界までパラグライダーを傾けては直す。そんな挑戦も面白いものです。慣れてくると、パラグライダーの傾きに耐えて、耐えて少しずつ傾けていき、翼端を地面に付けられるように傾け、そこから一気にパラグライダーの傾きを修正していくようなことも出来るようになります。ただし、ある程度の風速でグラウンドハンドリングを行うにはDライザー、最近のパラグライダーだとCライザーでの操作を習得しておく必要があります。これは不意に強い風が吹いたときに飛ばされてしまわないようにするためで、前もって練習して身につけておく必要がありますので、こちらも挑戦してみましょう。そうそう、よくフライトが出来ないような風速で他にやることも無いから練習するんだ!そんな人もいますが、飛べない風で練習することにそれほど効果があるようには思えません。強すぎる風の時は練習はやめましょう。

パラグライダーのライズアップトレーニングのまとめ


 ここに紹介したのはわざと動きに制限を設けること、そしてその制限のなかで捉える感覚を絞って身につけること。そのような目的で紹介してみました。そのときそのときに捉えるべきパラグライダーの感覚という言葉では伝えにくい概念を伝えるためのトレーニング方法です。ただ闇雲にパラグライダーをライズアップして走って浮いてしまう。そのような動作ではなく、テーマを細分化して絞り、そこから出来ないことを明確にして練習する。ですから人によってはもっと違う練習が効果的なこともあろうかと思います。また僕自身も違う練習方法を思いついたら自分で試して紹介しようと思います。次回はパラグライダーが頭上安定から離陸するまでを取り上げようと思います。みなさんも知っていらっしゃると思いますが、離陸直後こそもっともパラグライダーが不安定な状態?この記事の連載もいよいよ一つ目の山場を迎えようとしています。それではまた次回に。今回もご一読ありがとうございました。

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 日に日に北風が吹き、冬の訪れを感じてしまうこの頃、みなさんはいかがお過ごしでしょうか?先日、パラグライダーのライズアップを解析すると題した特別合宿を行いました。気象条件により、なかなか難しい状況でしたが、ビデオ撮影および解析、パラグライダーのライズアップを理論的に学習する、自分の出来ていないことや苦手な状況を知る、そして効果的な実際の練習方法の提示までを行いました。突き詰めると、パラグライダーのライズアップも奥が深いもの。たかがライズアップと侮ることなかれ、実際のパラグライダーの操作につながることも多く、参加した人は成果を得られたようでした。さて、第4回目のパラグライダーQ&Aは「パラグライダーのライズアップにおいてどのように傾きを修正するか」その実践編をお届けします。

パラグライダーが傾いたときの修正動作がもたらすメリット


 前回は、パラグライダーの傾きの修正動作に触れる前に、パラグライダーのライズアップの中止を判断し、実行することの大切さを中心にお話ししました。そうはいっても修正動作で頭上に安定させることができれば、完全な目視と飛行判断を行うことが出来るようになります。テイクオフを決断するときに大きな余裕が生まれます。時間的な余裕(判断までの時間が長くなる)、空間的な余裕(判断をするために必要なスペース)が生まれることで、精神的に大きなアドバンテージを得ることが出来るようになります。そのアドバンテージをもってパラグライダーの離陸に望めることは大きな安全マージンを確保することにもつながるのです。

パラグライダーの傾きについて知りましょう。


 実際の修正動作をひもとく前に、パラグライダーが傾くとどのような現象が起こり、人はどのようにそれを感覚的に捉えることが出来るのかを整理しておきましょう。パラグライダーは空気が流入して、そのプロファイルが形成され始めると、その上面と下面とに空気が流れます。ここらが翼のスタートです。ライズアップの感覚でいうと、もっとも重たいライザーのテンションがかかった直後です。ここからライザーは軽くなりはじめ、パラグライダーが自走し始めて、頭上へと登ってきます。この段階以前で傾くのは、翼として傾くことと同じではありません。空気の入り方が不均等であることが原因です。空気の流れ方が不均等であるためであったり、パラグライダーの風見効果が原因でない、ということです。この現象を防ぐにはセットアップが重要であることは以前にお話ししました。ただしこのような原因を同一にして、その後パラグライダーが不均等なまま頭上へ向かってくることはあります。あるいは、ライズアップの開始からの風向きの変化、はじめからパラグライダーのセット方向に対して風が垂直で無ければ、同様にパラグライダーは傾きます。すこし、回りくどい説明になってしまいました。ここでの要点は一つです。パラグライダーが翼として機能しているかどうかです。別の言い方をすると揚力を発生している段階かどうかで、修正動作が異なるということを理解して下さい。
 みなさんが習っている動作の一つには、次のようなパラグライダーの傾きの修正動作があると思います。それは次のようになると思います。「傾いたパラグライダーの方向へステップして、ブレークコードをカウンター操作すること」聞けば非常に簡単に思えます。それでも実際には苦手な人が多いのはなぜでしょうか?

パラグライダーの修正動作のコツをつかむ?


 それは、この動作にタイミングや操作の量の問題があることをつかめていないということではないでしょうか? 重要な箇所なので整理しておきますね。セットアップに原因があるにせよ風に原因があるにせよ、パラグライダーへの空気の流入が不均等で傾いている段階では修正動作としてが出来ることはあまりありません。せいぜいそれ以上に傾かないように走るラインを変更するぐらいです。しかしその後はたくさんあります。つまり翼に空気の流れが生じ、揚力を発生させた段階のことです。よくみかける誤った操作を例にあげますね。それは、傾いたパラグライダーに対して大きなカウンター操作を行ってしまう操作パターンです。パラグライダーが右に向かうので左ブレーク操作を大きく行い、そのままグライダーが後方に落ちてしまう事例をよく見かけると思います。操作としては誤っていないのに、なぜこのような現象がおこるのでしょうか。これはブレークコードによってパラグライダーの迎角が増大して失速していると考えられます。ライズアップで頭上安定を得られる以前のパラグライダーは飛行時に比較して大きな迎角になっています。つまり飛行しているときに比べて遙かに早いタイミングで失速(空気が剥離する)して後方へ落ちていきます。頭上安定とは修正動作の後に確保するべきタイミングですから、実際の修正動作ではブレークコードによる修正に非常に制約があるのです。タイミングも同様に制約があります。
「傾いたパラグライダーの方向へステップして、ブレークコードをカウンター操作すること」この方法は正しいのですが、この方法どおり実践してもパラグライダーに正しく作用しないこともあるのです。むしろ制約のなかでこの動作ができるかどうかが、コツになるのです。

パラグライダーの修正の具体的事例を考える。


 ブレークコードをカウンター操作する。この操作によってパラグライダーを修正できるのは、パラグライダーの迎角がある程度小さくなる段階からです。しかもその操作には失速に対する制約から出来る範囲が決まってきています。当然グライダーのクラスがあがると失速に対する特性からブレークのカウンター操作だけでは対応が難しくなるのです。振り返って操作の前半部分を分析してみましょう。パラグライダーの傾きの方向へのステップ。この操作は次の空力的な特性で非常に有効です。一つ目はパラグライダーが本質的には高い振り子安定を有して自立安定性にすぐれた翼であること。二つ目は速度をコントロールすることで迎角に依存するブレークコードのカウンター操作の欠点を補えること。一つ目から行きましょう。空中を飛行するパラグライダーを想像して下さい。ターンする操作から特別なことをしなくても(つまりはターンに必要なブレーク操作をやめる)簡単に直線飛行へ移行します。ところが地上ではこの振り子による自立安定が作用しません。人は自分の運動慣性を強く感じてしまうからだと思います。慣性とはそのままであろうとすることです。止まっているものは止まっている。走り出すと止まるのはそのための動きが必要です。方向を変えるのもそのための動きが必要です。いちど走り出すとそのままに走り続けてしまうのはそれが運動慣性であるからです。しかし、パラグライダーの傾きの修正時にはそれほど困難な動作ではありません。それはその運動慣性にパラグライダーによる強制力が作用するからです。それはパラグライダーの揚力です。揚力はパラグライダーの翼に対して垂直方向に作用するためその方向に人を引っ張ります。この力に逆らわずに走ればパラグライダーの自立安定を取り戻すことが出来ます。この動きは傾きの修正に非常に有効です。ここにコツがあります。ブレークによるカウンター操作よりステップ方向をコントロールすることが傾きの修正に有効に左右することを知るか知らないか?というコツがここにあります。二つ目は走る速度のコントロールです。あまり書かれていないことですが、パラグライダーが傾いている。このことは揚力の方向が傾いていることになります。この傾きが遠心力と向心力の均衡を作り出してパラグライダーは旋回します。つまり傾きは旋回を作り出します。そう考えると直線飛行と旋回時のパラグライダーの飛行速度に違いがあることに皆さんも気づかれるでしょう。旋回時のパラグライダーは速度が速いのです。これは必要な揚力が一緒なのに、翼面積が減少することで起こります。だからパラグライダーの傾きの修正動作には速度を上げる動きが必要になるのです。これはむしろ傾きを修正するというよりは一連の修正動作においてパラグライダーを失速をさせないために必要な動作です。ブレークによるカウンター操作は迎角を大きくします。ところが、この操作は通常の旋回を直線飛行に戻すときにはよく行われています。この操作が問題なくパラグライダーに作用するのは必要な速度と迎角が保たれているからです。ライズアップの段階ではこのうち迎角に大きな制約があることはお話ししました。したがって、大きなカウンター操作をする必要があるときは、人間によってパラグライダーの速度を上げる必要があるのです。ここにも修正動作をミスしないコツが隠れています。

パラグライダーの修正動作に関するまとめ


「傾いたパラグライダーの方向へステップして、ブレークコードをカウンター操作すること」も当たり前のように習ってきたことですので、すでに飛行しているのに知らない、という人はいないと思います。ですが、知っているのに出来ない、知っているのに苦手、という人が多いのも事実です。先の言葉を呪文のように記憶しても、パラグライダーのライズアップは上達しません。まずは現象をただしく理解することが必要です。次に必要な練習を行うことで正しい感覚を身につけることが重要です。次回は効果的な練習方法のいくつかを実践例としてご紹介したいと思います。今回もご一読ありがとうございました。

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 いよいよ3回目です。この記事は、パラグライダーに関してよくありがちな疑問やお悩みを解決して頂くためのきっかけ作りを目指しています。いまのところ、パラグライダーのライズアップを取り上げています。前回では準備の重要性についてのお話でした。パラグライダーのセットアップのことですね。技術的には、上手になろうと思うのは素晴らしいことです。ちょっと堅い話になると思うのですが、パラグライダーの準備はプレフライトチェックという非常に重要なプロセスを含みます。パラグライダーは離陸すると引き返すことは出来ません。先日もレスキューパラシュートのピンが外れたままテイクオフを始めようとしているパイロットを見かけました。まずは、落ち着いてしっかりと準備をすることが大切です。本題に入りましょう。今日はパラグライダーが傾いてしまったら?そんな状況についての考察です。

パラグライダーが傾いたときはどうすればいいの?


 パラグライダーがライズアップの動作中に傾くことは好くあることです。そしてその傾きが上手に修正できない人が多いのもよく見かけます。なかには、修正の動作が追いつかず、ドタバタしているだけ、最後には片側のパラグライダーがつぶれたまま離陸してしまう、そんな状況もよく見かけます。思い出して下さい。パラグライダーの練習をしていた頃のこと。盛んに傾いたときの対処についてインストラクターにあれやこれや、うるさくいわれたのではないでしょうか?現在ではこのようなトレーニングの前段階で必ず行うトレーニングがあります。それは「止まる」練習です。それはパラグライダーが傾く原因の一つにラインが絡まっている可能性があるからです。

パラグライダーが傾いたら止まるべきだ!


 タイトルそのままですが、パラグライダーが傾いたら止まるべきだ。これでは、肩すかしもいいところだ!そんな思いを抱かれた方もいると思うのですが、少し説明をさせて下さい。最近のパラグライダーは軽量化と高性能化のバランスが高次元で保たれ、しかも取り扱いは容易です。いいことずくめですね。それらのパラグライダーに見られる共通の構造は、ラインが少ないということです。AからDまで4列あるグライダーはほとんど見られなくなってきました。さらに、ラインのカスケード(枝分かれのことですよ)も複雑になっています。これはラインの総延長を少なくするためだと思われます。これらの構造はパラグライダーの性能を飛躍的に向上させることは間違いないと思うのですが、ライン一本あたりの荷重が増加していることも、間違いありません。つまり、ライン一本がパラグライダーの空力的な非行特性に与える影響も増大していると思って間違いないでしょう。ちょっとしたラインの結びがパラグライダーのフォルム全体の変形につながるようになってきています。
 完全なパラグライダーはまだ存在しない。 これは間違いないことで、だからこそ運用の方法や注意するべき箇所も、時代の流れによって変わっていくのです。

パラグライダーのライズアップを停止させるには?


 振り返りますが、ライズアップを「パラグライダーが確実に離陸するための準備が整った段階」と定義しました。パラグライダーの教科書ではこの段階のことを「頭上安定」としています。ここを過ぎると離陸するための揚力を得るため人は加速し、パラグライダーに十分は空気の流速を与えようとします。この段階で停止することは非常に難しいと断言できます。速度が出ていることで停止に時間がかかります。また一般的にパラグライダーの離陸場は離陸しやすいようにだんだんと傾斜が大きくなるように作られています。これも止まりにくい原因となります。さらに、揚力が増大する傾向にある状態のパラグライダーは、ブレークコードを引き込んで迎え角を増大することで揚力がますます増加し、不用意に浮かされてしまうことになります。したがって、パラグライダーのライズアップを停止させるのはなるべく早い段階が良いことになります。
 パラグライダーが翼として機能する前、空気のインフレーションの段階でやめてしまった方がいいと思います。最初のライザーテンションを感知して、あがらない?そう感じたらライズアップは中止してしまいましょう。僕も最初のテンションからインフレーションを感じるまでの感覚で停止を判断しています。傾きを修正しようとする段階の前ですね。意外にあっさりとやめてしまっていますよ。かっこ悪い?いいえ!素早くライズアップを停止させるのはとてもかっこいいと思います。パラグライダーを感覚で捉えているエキスパートの動作です。なんでもかんでもライズアップしてドタバタ修正してあたふた離陸しているよりはるかに美しい動作です。それに、人が近くにいるところでパラグライダーを落とした方がすぐに広げてもらえるでしょう!ドタバタしたあげく斜面の下の方でパラグライダーを斜面横の木に引っかけてしまうよりは、さっさと人の近くでライズアップをやめて広げ直してもらいましょう。それが今回の僕からの提案でした。「ライズアップはやめてしまってかまわない」そんな風に割り切ってしまうと、離陸時に感じるプレッシャーも幾分軽くなるのではないでしょうか?さて、そんな幾分軽くなった心理状態で、シャープな感覚でパラグライダーを感知し、適切な運動を要求されるのがパラグライダーのライズアップ時の傾きの修正動作です。随分難しそうですね。傾いたらどうしよう?そんなプレッシャーにがちがちになっていてはおぼつかないのが傾きの修正動作です。そうです。ライズアップをやめてやり直すことに比較するとパラグライダーの傾きの修正動作ははるかに難易度があがります。次回はここをテーマにしたいと思います。

パラグライダーの傾き修正は人生の修正ぐらい難しい?


 そうはいってもやっている人いるよねー!きれいにパラグライダーの傾きを修正して、何事も無かったかのように頭上でグライダーを安定させて、確実に目視して、憎たらしいぐらい落ち着いて、嫌みなぐらいゆっくりと必要なだけ加速していくパイロットが!どうしてなんだー!ちょっと落ち着きましょうか。僕が書いたテキストを一読しただけでそんな風にパラグライダーのテイクオフが出来るのなら、それはもう講習では無くて催眠術か黒魔術です。まずは傾いたパラグライダーについてよく知りましょう。必要な動作とそのタイミングを知りましょう。そしてここは教科書にも載っていないポイントですが、なぜ修正動作が苦手な人が多いのかを改めて考えてみることにしましょう。それではまた次回。今回もご一読ありがとうございました。

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